この記事の要点
- 日本語タイトル:高齢サルコペニアで筋トレ+アミノ酸サプリは筋力と歩行機能を改善するか?
- 英語タイトル:Combined resistance training and amino acid-based supplementation for sarcopenia in older adults: a systematic review and meta-analysis.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科の外来で、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつどかみくだいて説明していきますので、ゆっくり読んでみてください。
研究の背景・目的
「サルコペニア(Sarcopenia、加齢にともなう筋肉量と筋力の低下)」は、筋力が弱くなったり歩く速さが落ちたりすることで、転びやすくなったり、将来介護が必要になる可能性を高める状態です。そのため、整形外科の外来でもとても大事な病気として扱われています。年を重ねると、体の中で筋肉をつくる力(筋タンパク質の合成)が弱くなっていくと考えられており、その不足を補う方法のひとつとして、「アミノ酸(Amino acids、タンパク質をつくる最小の部品)」を含むサプリメントを、筋力トレーニングと一緒に使うことが注目されています。
調査の方法(対象など)
この研究では、サルコペニアのある高齢の方を対象にした「RCT(Randomized Controlled Trial、無作為化比較試験:治療法をくじ引きのように分けて公平に比べる研究)」を集めて調べる「系統的レビュー(Systematic review、一定のルールで文献を集めてまとめる方法)」を行いました。そのうえで、「メタ解析(Meta-analysis、複数の研究結果を統計的にまとめて全体としての傾向を見る方法)」という手法を使い、筋肉に負荷をかける運動である「抵抗性トレーニング(Resistance training、いわゆる筋力トレーニング)」だけを行った場合と、「必須アミノ酸(Essential amino acids、人の体内で作れず食事などからとる必要があるアミノ酸)」や「BCAA(Branched Chain Amino Acids、分岐鎖アミノ酸:バリン・ロイシン・イソロイシンという3種類のアミノ酸)」、「ロイシン(Leucine、筋肉の合成に関わるとされるアミノ酸)」、「HMB(β-hydroxy-β-methylbutyrate、βヒドロキシβメチル酪酸:ロイシンから体内で作られる物質)」などのアミノ酸系サプリメントを筋トレに組み合わせた場合とを比べました。
研究の結果
最終的に、9件の無作為化比較試験(RCT)で合計496人分のデータが解析されました。その結果、筋力トレーニングだけを行ったグループと比べて、アミノ酸系サプリメントを筋トレに組み合わせたグループでは、「握力(手で物をつかむ力)」、「歩行速度(歩く速さ)」、「SPPB(Short Physical Performance Battery、短縮版身体機能評価バッテリー:立ち上がりやバランス、歩行などをまとめて評価するテスト)」、そして「立ち上がりテスト(椅子から立ち上がる動作を評価するテスト)」が、統計学的に意味のある範囲でより良くなっていました。一方で、筋肉の量そのものがどれくらい増えたかについては、はっきりした差があるとは言えない結果でした。
結論:今回の研究でわかったこと
サルコペニアのある高齢の方では、筋力トレーニングにアミノ酸系サプリメントを組み合わせることで、筋力や歩く能力などの機能が良くなる可能性があると考えられます。ただし、もともとの食事で十分なタンパク質(Protein、筋肉や臓器の材料となる栄養素)がとれていることや、筋トレなどの運動を継続して行うことが前提になります。そのうえで、アミノ酸系サプリメントを追加で使うかどうかを検討する価値がある、という位置づけです。
実際の診察ではどう考えるか
サルコペニアの高齢の方の診療では、筋肉の量そのものよりも、「握力」や「歩く速さ」など、実際の日常生活に直結する機能の改善を重視することが多いです。そのため、まずは普段の食事でタンパク質が足りているか、そして筋トレなどの運動を無理なく続けられているかを確認します。そのうえで、必要に応じてアミノ酸系サプリメントを、治療のひとつの選択肢として検討していく、という考え方になります。
参考文献
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Combined resistance training and amino acid-based supplementation for sarcopenia in older adults: a systematic review and meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41540398/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















