この記事の要点
- 日本語タイトル:頚部理学療法は片頭痛患者の痛み感受性を下げるか?
- 英語タイトル:Efficacy of cervical physical therapy on pain sensitivity in patients with migraine compared to no treatment, sham treatment or usual medical care: a systematic review and meta-analysis.
ここでは、首まわりのリハビリ(頚部理学療法)が片頭痛の方の「痛みの感じやすさ」にどのくらい影響するかをまとめた研究を紹介します。
ふだん整形外科やリハビリの外来で話題になる内容ですが、専門用語はできるだけかみくだいてお話しします。
研究の背景・目的
片頭痛(Migraine、ズキズキする頭痛発作をくり返す病気)の方では、首や頭の筋肉を押すと痛みを感じやすいことが多いとされています。
ここでいう「圧痛(あっつう)」は、指などで押したときに痛みを感じること、「痛み感受性亢進(こうしん)」は、ふつうより痛みを感じやすくなっている状態を指します。
首のリハビリである「頚部理学療法(Cervical Physical Therapy、首の筋肉や関節を動かしたりストレッチしたりする治療)」によって、押したときに痛みを感じ始める強さ=「圧痛閾値(あっつういきち、どのくらいの力で押すと痛いと感じ始めるか)」が、どこまで改善するのかを確かめることが、この研究の目的でした。
調査の方法(対象など)
医学論文のデータベースであるPubMed(パブメド、世界中の医学論文を検索できるサイト)など、複数のデータベースから、片頭痛の患者さんを対象にした「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial、無作為化比較試験:治療を受けるグループと受けないグループなどに、くじ引きのような方法で分けて比べる研究)」を集めました。
そのうえで、首のリハビリである頚部理学療法を行ったグループと、何もしないグループ(無治療)、本物そっくりだが効果のない治療を行うグループ(シャム治療、Sham Treatment)、ふだん通りの薬などの治療を行うグループ(通常の医療ケア)とを比較しました。
研究の結果
4つの試験をまとめて解析する「メタアナリシス(Meta-analysis、複数の研究結果を統合して全体としての傾向を調べる方法)」を行ったところ、頚部理学療法を受けたあとには、全体として圧痛閾値が上がる、つまり押したときに痛みを感じ始めるまでに必要な力が強くなる方向の変化がみられました。
ただし、統計的に意味のある差(有意差)がはっきり出たのは、「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん、首の前〜横にある大きな筋肉)」と「前頭筋(ぜんとうきん、おでこのあたりにある筋肉)」だけでした。
また、これらの結果について、研究としてどれくらい信頼できるかを示す「エビデンス確実性(Evidence Certainty)」は、全体として「低い〜非常に低い」と評価されました。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の研究では、首のリハビリである頚部理学療法によって、胸鎖乳突筋と前頭筋の圧痛閾値が上がる、つまりその部分の「押したときの痛みの感じやすさ」が下がる可能性が示されました。
一方で、その根拠となる研究の信頼度(エビデンス)は高くないと判断されており、現時点では、頚部理学療法は片頭痛治療の「補助的な方法」として位置づけるのが妥当と考えられています。
実際の診察ではどう考えるか
診察の場では、頚部理学療法は片頭痛の「メインの治療」というより、薬物療法などの標準的な治療に加える「補助的な手段」として考えるのが現実的です。
実際に行う場合は、標準治療と併用しながら、患者さんごとの首や頭の筋肉の状態、痛みの変化、生活への影響などを丁寧に確認し、その方に合っているかどうかを慎重に見きわめていくことが大切になります。
参考文献
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Efficacy of cervical physical therapy on pain sensitivity in patients with migraine compared to no treatment, sham treatment or usual medical care: a systematic review and meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41548105/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















