この記事の要点
- 日本語タイトル:慢性疼痛は生活習慣や感情でどこまで変化しうるか?
- 英語タイトル:Pain-Related Social and Behavioral Changes: a Complex Interplay.
このテーマは、リハビリテーション(Rehabilitation、機能回復のための治療)や整形外科の外来で、日常的によく話題になる内容です。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、普段の診察室でお話しするような言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
慢性疼痛(Chronic Pain、3か月以上続く長引く痛み)は、人口の中で一定の割合の方にみられます。そのため、公衆衛生(Public Health、社会全体の健康状態を守る取り組み)や、医療費・休職などを含む社会経済に、かなり大きな負担をもたらす状態として注目されています。
調査の方法(対象など)
この論文は、慢性疼痛についてのさまざまな研究をまとめて整理した「レビュー論文」です。具体的には、脳の働きを画像で調べる神経画像研究(Neuroimaging Study、MRIなどで脳の状態をみる研究)や、行動医学研究(Behavioral Medicine、行動や生活習慣と健康の関係を調べる研究)、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy、考え方や行動のクセを見直して症状の軽減を目指す心理療法)などを統合して検討しています。
研究の結果
慢性疼痛のある方では、前帯状皮質(Anterior Cingulate Cortex、痛みや感情の処理に関わる脳の一部)や扁桃体(Amygdala、不安や恐怖などの感情に関わる脳の一部)などで、「不適応な脳可塑性変化(Maladaptive Neuroplasticity、本来よりも好ましくない形で脳の働き方が変わってしまうこと)」が起こることが整理されています。これらの変化は、痛みそのものの強さだけでなく、日常生活でどのくらい困っているかという障害度や、仕事が続けられているかといった就労状況にも影響しているとまとめられています。
結論:今回の研究でわかったこと
慢性疼痛は、単に「痛みのある部位だけの問題」ではなく、生物学的な要因(体や脳の変化)、心理的な要因(気分や考え方)、社会的な要因(仕事や家庭環境、人間関係など)が複雑に関わる、全身的な病態と考えられます。そのため、痛みの強さを点数でつける「痛みスコア」だけで評価するのは十分ではない可能性が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
診察の場では、痛みの強さだけを聞くのではなく、ふだんどのくらい体を動かせているかという活動量、眠りの状態(寝つき・途中で目が覚める・朝の目覚めなど)、ストレスの状況、仕事や家事・対人関係といった社会機能も一緒に確認していくことが大切になります。そのうえで、薬やリハビリテーション、認知行動療法など、複数の方法を組み合わせた多面的な介入を考えていく視点が重要とされています。
参考文献
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Pain-Related Social and Behavioral Changes: a Complex Interplay.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41591584/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















