この記事の要点
- 日本語タイトル:かかとを高くするとスクワットの足首と膝の可動域は本当に増える?
- 英語タイトル:Heel elevation increases ankle and knee range of motion during squatting in healthy adults: a systematic review with meta-analysis.
このテーマは、リハビリテーション(けがや病気の後に体の機能を回復させる治療)や整形外科(骨や関節、筋肉などを診る診療科)の外来で、よく話題になる内容です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
スクワットをするときに、かかとの下にプレートや板を敷いて少し高くする方法は、トレーニングやリハビリの現場でよく行われています。ただ、「どのくらいの高さ」にすると、足首や膝などの関節の動く範囲(可動域:Range of Motion, ROM[アール・オー・エム])がどれくらい変わるのか、はっきりとはわかっていませんでした。
そのため、整形外科やリハビリの現場では、「エビデンス(科学的な根拠)に基づいた、かかとの高さの目安」が必要と考えられており、それを調べることがこの研究の目的でした。
調査の方法(対象など)
2025年9月までに発表された医学論文を、複数のデータベース(医学論文を集めた検索システム)から系統的に探し出し、条件に合う研究をまとめました。対象は、病気のない健常な成人で行われた研究です。最終的に14本の研究、合計177名分のデータをまとめて解析する「メタ解析(複数の研究結果を統合して、全体としての傾向を調べる方法)」を行いました。
かかとの高さを変えてスクワットをしたときに、横から見た方向(矢状面:体を横から見たときの動き)での関節の可動域(ROM)がどう変わるかを比較しました。また、かかとの高さを「低いヒール」と「高いヒール」の2つのグループに分けて詳しく比べる「サブグループ解析」と、ヒールの高さと可動域の変化の関係を数値的に調べる「メタ回帰解析」も行いました。
研究の結果
かかとを持ち上げる(ヒールリフト)ことで、足首の可動域(ROM)は平均で約4.33度増え、膝の可動域は約4.94度増えるという結果でした。さらに、より高いヒールの条件では、足首の可動域は平均で約5.09度と、増え方がやや大きくなっていました。
一方で、股関節(太ももの付け根の関節)と体幹(胸やお腹、背中を含む胴体部分)の可動域については、全体としてはっきりした増加は見られませんでした。むしろ、かかとの高さが高くなるほど、股関節や体幹の動きはわずかに小さくなる傾向があることが示されました。
結論:今回の研究でわかったこと
かかとを少し高くしてスクワットを行うと、スクワット中の足首と膝の可動域(ROM:関節が動く角度の範囲)が統計的に意味のある形で増えることが示されました。特に、2.5cmを超えるような、やや高めのヒールリフトでは、足首の可動域の増加がよりはっきりしていました。
この結果から、足首の背屈制限(背屈:足首を上に反らす動きが硬くて出にくい状態)や、膝を深く曲げる動きを、できるだけ安全に引き出したいときに、かかとを高くする工夫が一つの補助的な方法となる可能性があると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
足首の背屈が硬くて出にくい方や、膝を深く曲げる動きを安全に引き出したい場面では、2.5cm前後以上のヒールリフトや、かかとの下にプレートを敷いて行うスクワットが、体重のかかり方(荷重パターン)を調整する一つの有力な選択肢となる可能性があります。ただし、実際に行う際には、膝や腰など他の部位への負担も考えながら、主治医や理学療法士と相談して取り入れていくことが大切です。
参考文献
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Heel elevation increases ankle and knee range of motion during squatting in healthy adults: a systematic review with meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41612762/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















