この記事の要点
- 日本語タイトル:膝OA患者で通常リハとターゲット運動追加は痛みやバランス改善に差が出るか?
- 英語タイトル:Effects of a Targeted Exercise Program on Pain, Balance, Proprioception, and Function in Adults With Knee Osteoarthritis.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の外来でよく問題になるテーマです。
専門的な話も出てきますが、できるだけ日常のことばでお伝えしていきます。
研究の背景・目的
変形性膝関節症(へんけいせい ひざ かんせつしょう、英語:Knee Osteoarthritis/略称:膝OA)は、膝の軟骨がすり減ることで起こる病気で、膝の痛みだけでなく、歩きにくさや立っているときのバランスの悪さが出やすくなります。その結果、転びやすくなることが問題になります。この研究では、従来から行われているリハビリテーション(関節を動かしたり筋力をつけたりする運動)に加えて、「固有感覚(こゆうかんかく:自分の関節や体の位置を感じ取る感覚)」と「バランス能力」をねらった運動を追加することに、どのくらい意味があるのかを調べています。
調査の方法(対象など)
50〜65歳の変形性膝関節症(膝OA)の患者さん30名を対象にしました。
一方のグループは「通常のリハビリだけ」を行い、もう一方のグループは「通常のリハビリに加えてターゲット運動(固有感覚やバランスをねらった運動)を追加」しました。
どちらのグループも4週間、リハビリを続けました。そのうえで、膝の痛み、膝の機能(どれくらい動かせるか・使えるか)、固有感覚、静的バランス(じっと立っているときのバランス)、機能的リーチ(前に手を伸ばせる距離)を、
反復測定分散分析(はんぷく そくてい ぶんさん ぶんせき、英語:repeated measures ANOVA)という統計の方法を使って、時間の経過による変化とグループ間の違いを比較しました。
研究の結果
どちらのグループも、4週間のリハビリで膝の痛みと膝の機能はよくなっていました。
その中でも、ターゲット運動を追加したグループでは、固有感覚の誤差(自分の膝の位置をどれくらい正確に感じ取れるかのズレ)が約34〜36%減り、静的バランスが25〜42%よくなり、機能的リーチ(前に手を伸ばせる距離)も約11%伸びていました。また、痛みの減り方も、通常のリハビリだけのグループより大きいという結果でした。
結論:今回の研究でわかったこと
通常のリハビリに、4週間ターゲット運動(固有感覚やバランスをねらった運動)を追加すると、痛み・バランス・固有感覚が統計的にみてより大きく改善していました。このことから、変形性膝関節症(膝OA)の方にとって、転倒を予防したり、QOL(キューオーエル:Quality of Life/生活の質、生活のしやすさ)を高めたりするうえで、有用な選択肢のひとつになりうると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
変形性膝関節症(膝OA)のリハビリでは、電気治療や徒手療法(としゅりょうほう:セラピストが手を使って行う治療)だけでなく、「荷重位バランス練習(かじゅうい バランスれんしゅう:体重をしっかりかけた状態でのバランス練習)」や「関節位置覚トレーニング(かんせつ いちかく トレーニング:膝の位置を正確に感じ取る練習)」を、少なくとも4週間は組み合わせて行うことが、転倒を予防し、ADL(エーディーエル:Activities of Daily Living/食事・トイレ・歩行など日常生活動作)を安定させるうえで大切だと考えられます。
参考文献
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Effects of a Targeted Exercise Program on Pain, Balance, Proprioception, and Function in Adults With Knee Osteoarthritis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41656941/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

















