この記事の要点
- 日本語タイトル:入院リハ患者にデジタル自主トレ追加で運動量と歩行は増えるか?
- 英語タイトル:Implementing exercise using digital devices to improve mobility and physical activity in people receiving inpatient rehabilitation: phase II of a feasibility hybrid type II implementation-effectiveness randomised controlled trial.
このテーマは、入院してリハビリテーション(Rehabilitation、けがや病気のあとに行う機能回復のための訓練)を受けている方にとって、とても身近な内容です。
ふだん外来や病棟でお話ししているようなイメージで、できるだけ専門用語をかみくだいて説明していきます。
研究の背景・目的
入院してリハビリを受けている患者さんは、ベッドで横になっている時間が長くなりやすく、その結果として1日の身体活動量(どれくらい体を動かしているか)が少なくなりがちです。これは筋力低下や歩く力の低下につながる可能性があるため、問題とされています。
これまでのRCT(Randomized Controlled Trial、ランダム化比較試験:患者さんをくじ引きのように2つ以上のグループに分けて、治療効果を公平に比べる研究)では、タブレット端末などのデジタル機器を使って、理学療法(Physical Therapy、運動や体の使い方を中心としたリハビリ)のエクササイズを追加すると、歩く能力や1日の活動量がよくなる可能性があると報告されています。
今回の研究では、「効果があるかどうか」だけでなく、「ふだんの人員体制(スタッフの人数)でも、こうしたデジタル機器を使った自主トレーニングを現場に取り入れられるかどうか」という、実際の運用面もあわせて確かめた点が特徴です。
調査の方法(対象など)
対象となったのは、公立病院の入院リハビリ病棟に入院している成人の患者さんです。
研究のデザインは「ハイブリッドtype II(Hybrid Type II)」と呼ばれる方法で、これは「実装(Implementation、現場に導入できるかどうか)」と「有効性(Effectiveness、効果があるかどうか)」の両方を同時に評価するタイプのRCT(ランダム化比較試験)です。さらに、第II相試験(Phase II trial、治療法の有効性や安全性を、比較的少人数で詳しく見る段階の臨床試験)として行われました。
合計22名の患者さんを、介入群11名と対照群11名にランダムに割り付けました。どちらのグループも、通常のリハビリ内容は同じにしました。そのうえで、介入群には、あらかじめ訓練を受けた理学療法士が、タブレットなどのデジタル機器を使って、1日30分以上、14日間続ける追加エクササイズを処方しました。
この研究で特に重視した「主要アウトカム(Primary outcome、研究の一番大事な評価項目)」は、①運動量などの記録がどれくらいきちんと取れたか(記録率)、②どのくらいのペースで患者さんに研究へ参加してもらえたか(リクルート速度)、③決められた目標の運動量を達成できた人の割合、の3つでした。
研究の結果
最終的に22名が研究に登録され、介入群11名、対照群11名に分かれました。運動量などの記録は、全ての患者さんで取ることができ、データの抜け(欠測)はありませんでした。
リクルート速度、つまり1人の患者さんに研究へ参加してもらうまでにかかった期間は、平均で約5週間でした。
介入群の中で、タブレットなどのデジタル機器を使って「1日30分以上の運動を14日間続ける」という目標を達成できたのは36%で、およそ3人に1人の割合でした。
この結果から、ふだんのスタッフ数(通常人員)のままでも、デジタル機器を使った自主トレーニングを技術的に導入すること自体は可能と考えられました。一方で、すべての患者さんが目標とした運動量をこなすには至らず、運用の仕方やサポート体制などを工夫する必要があることが示されました。
結論:今回の研究でわかったこと
入院中のリハビリ患者さんに対して、タブレットなどのデジタル機器を使った自主トレーニングを追加すると、今のような通常のスタッフ数でも、1日の運動量を増やすことを目指せる可能性があると考えられました。
ただし、決められた目標の運動量を達成できたのは一部の患者さんに限られていました。そのため、どのような患者さんに向いているかを見きわめること(患者選択)や、どのような形で導入するか(説明の仕方、サポートの方法など)を工夫することが、実際の診療現場では大切なポイントになると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
入院病棟でタブレットなどを使ったデジタル自主トレーニングを取り入れることは、患者さんの1日の運動量を増やすための、現実的な選択肢のひとつになり得ます。
一方で、今回の研究では、目標とした運動量を達成できたのは一部の患者さんにとどまっていました。そのため、患者さんご本人の理解度ややる気、病棟の環境(機器を置く場所や使いやすさなど)、スタッフがどのようにフォローするかといった体制を整えることが重要と考えられます。
また、この研究は1つの医療機関で、比較的少ない人数を対象に行われたものです。そのため、この結果をそのまま他の病院やすべての患者さんに当てはめるときには、慎重な判断が必要とされています。
参考文献
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Implementing exercise using digital devices to improve mobility and physical activity in people receiving inpatient rehabilitation: phase II of a feasibility hybrid type II implementation-effectiveness randomised controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41964471/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















