凍結肩に対するヒドロダイレーションの価値は?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:凍結肩に対するヒドロダイレーションの価値は?
  • 英語タイトル:Hydrodilatation for adhesive capsulitis: a systematic review exploring efficacy and optimal technique.

ここで取り上げる「凍結肩(英語名:adhesive capsulitis/肩の関節を包む袋が固くなり、動きと痛みが出る状態)」は、リハビリテーションや整形外科の外来でよくみられる病気です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

凍結肩では、一般的にステロイド注射(英語名:steroid injection/炎症や痛みを抑える薬を関節に直接注射する治療)や、理学療法(英語名:physical therapy/運動療法やストレッチなどで関節の動きや筋力を改善するリハビリ)が行われます。
それに加えて、ヒドロダイレーション(英語名:hydrodilatation/肩の関節の袋〈関節包〉の中に液体を注入して、内側からふくらませて広げる処置)という方法で、固くなった関節包(英語名:joint capsule/肩の関節を包んでいる袋状の組織)を広げる治療が行われることがあります。
この研究は、「凍結肩に対してヒドロダイレーションを行うことに、どのくらいの価値があるのか」を調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

この研究はシステマティックレビュー(英語名:systematic review/あるテーマについて発表されている多くの研究を集めて、方法を決めて整理・分析し直す研究手法)です。
原因がはっきりしないタイプの凍結肩である特発性凍結肩(英語名:idiopathic adhesive capsulitis/ケガや手術など明らかなきっかけがない凍結肩)の患者さん9,951人を対象とした、合計103本の研究をまとめて検討しています。

研究の結果

治療開始から12週(約3か月)たった時点で、ヒドロダイレーションを行ったグループは、ステロイド注射だけを行ったグループと比べて、肩を外側にひねる動き(外旋:英語名 external rotation/肘を体のわきにつけたまま、前腕を外側に開く動き)の可動域(英語名:range of motion/動かせる角度の範囲)が、より改善していました。
この差は、統計学的にはSMD 0.61, 95%CI 0.14–1.08と表されており、ヒドロダイレーションのほうが外旋の動きに関しては有利な可能性がある、という結果です。
一方で、痛みの強さを数値で表す指標である疼痛VAS(英語名:Visual Analogue Scale/0~10などのスケールで痛みの強さを自己申告する方法)や、肩の痛みと機能を評価する質問票であるSPADI(英語名:Shoulder Pain and Disability Index/肩の痛みと日常生活での困りごとを点数化する指標)については、ヒドロダイレーションとステロイド単独のあいだに、はっきりした差はみられませんでした。
また、安全性に関しては、合計8,754人のうち感染(英語名:infection/細菌などが入り込んで炎症を起こす合併症)が報告されたのは2例でした。

結論:今回の研究でわかったこと

凍結肩に対するヒドロダイレーションは、治療開始から12週の時点では、肩を外側にひねる動き(外旋)については、ステロイド注射だけの場合よりも良くなる可能性があります。
一方で、痛みの軽減や、肩を使った日常生活のしやすさ(機能)については、ヒドロダイレーションを追加しても、ステロイド注射だけと比べて、はっきりとした上乗せ効果はあまり見られていません。

実際の診察ではどう考えるか

外旋以外の多くの結果(アウトカム)については、エビデンスの確実性(英語名:certainty of evidence/その結果をどれくらい信頼してよいかの度合い)が高いとは言えず、まだはっきりしない部分が多いとされています。
また、ヒドロダイレーションの手技(英語名:technique/どのくらいの量を、どこに、どのように注入するかなどの具体的なやり方)にも研究ごとに大きな違いがあり、方法が統一されていません。
そのため、現時点では、ヒドロダイレーションを「誰にでも行う標準的な治療」として日常的に(routine に)使うかどうかについては、慎重に判断する必要があると考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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