TKA後の双方向遠隔リハは対面リハより本当に優れる?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:TKA後の双方向遠隔リハは対面リハより本当に優れる?
  • 英語タイトル:Effectiveness of Interactive Remote Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.

ここでは、膝の人工関節の手術(Total Knee Arthroplasty:トータル・ニー・アーソロプラスティ、以下TKAといいます)のあとに行うリハビリについてのお話です。
最近増えている「画面越しにお互いの様子を見ながら行う遠隔リハビリ」と、病院や施設に通って行う「対面のリハビリ」を比べた研究を、できるだけ専門用語をかみくだいて説明していきます。

目次

研究の背景・目的

TKAのあとには、膝の痛みを減らしたり、曲げ伸ばしを良くしたり、歩きやすくするためにリハビリテーション(Rehabilitation:機能回復訓練)がとても大切です。
ただ、手術後しばらくは通院が大変だったり、リハビリを担当するスタッフの人数が足りなかったりすることが問題になることがあります。
そこで、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを使って、画面を通してお互いに会話をしながら運動指導を行う「双方向インタラクティブ遠隔リハビリテーション(Interactive Remote Rehabilitation:IRR)」へのニーズが高まってきました。
この研究では、「このIRRは、従来の対面で行うリハビリと比べて、本当に効果が優れているのかどうか」を調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

対象となったのは、成人のTKA後の患者さんです。
IRRを受けたグループと、従来の対面リハビリを受けたグループを比べた「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCTといい、治療法をくじ引きのように分けて公平に比較する研究方法)」を集めました。
合計で23件のRCT、人数にすると2607人分のデータをまとめて分析する「システマティックレビュー(Systematic Review:一定のルールで論文を集めて評価する方法)」と「メタアナリシス(Meta-Analysis:複数の研究結果を統計的にまとめる方法)」が行われました。

研究の結果

痛みの強さや、膝の機能を評価する指標として、いくつかの有名な評価スケールが使われました。
例えば、
・WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index:変形性関節症の痛み・こわばり・日常生活動作のしやすさを点数化する質問票)
・KOOS(Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score:膝の痛み、症状、日常生活、スポーツ、生活の質などを点数化する質問票)
・Timed Up and Go(タイムド・アップ・アンド・ゴー:椅子から立ち上がって歩き、また座るまでの時間を測るテスト)
・EQ-5D(EuroQol 5 Dimensions:5つの項目で健康関連の生活の質を評価する質問票)
などです。
これらの指標で比べたところ、IRRは従来の対面リハビリに対して、「統計学的に明らかに優れている」とまでは言えない結果でした。
一方で、「短期の能動的伸展可動域(自分の力で膝を伸ばせる角度の範囲)」については、平均差0.26という、ごく小さいながらも有意な差がIRRに有利な形で認められました。

結論:今回の研究でわかったこと

23件のRCT、合計2607人分のデータをまとめて分析した結果では、双方向インタラクティブ遠隔リハビリ(IRR)は、痛みや膝の機能の面で、対面のリハビリよりはっきりと優れているとは言えない、という結論でした。
ただし、短期的な膝の伸ばしやすさ(膝伸展)については、IRRのほうがごくわずかに良いという差がみられました。

実際の診察ではどう考えるか

現時点では、IRRが対面リハビリより明らかに優れている、とは言い切れず、研究結果からわかる効果の大きさにも不確実な部分があります。
一方で、さまざまな事情で通院が難しい患者さんにとっては、IRRは現実的な選択肢のひとつになり得ると考えられます。
どの方法が自分に合っているかは、生活環境や通院のしやすさ、サポート体制なども含めて、主治医やリハビリスタッフと相談しながら決めていくことが大切です。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

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