この記事の要点
- 日本語タイトル:スポーツ復帰のGOサインをどう再定義する?
- 英語タイトル:Redefining Readiness – Bridging Knowledge Gaps in Return-to-Sport Criteria.
ここでは、けがや手術のあとに「いつスポーツに戻っていいか」をどう判断するか、というお話をします。
リハビリテーション(けがや病気のあとに行う機能回復のための治療)や、整形外科(骨・関節・筋肉・靱帯などを専門とする診療科)の外来で、よく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけ日常の言葉に置きかえながら説明していきます。
研究の背景・目的
スポーツ復帰の判断(Return to Sport:リターン・トゥ・スポーツ、略してRTS)は、本来は医学的な状態をもとに決めるべきものです。
しかし実際には、「試合に間に合わせたい」「チームの事情で早く戻ってほしい」「本人がどうしても出たい」といった、医学以外のプレッシャー(非臨床的プレッシャー)に影響されやすいと言われています。
さらに、「ここまで回復したら復帰してよい」という、共通の基準(標準化されたベンチマーク)がまだ十分に整っていないのが現状です。
この研究では、そういった現状を整理することを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は「ナラティブレビュー(narrative review:研究結果を物語のように整理してまとめる総説)」という方法で行われました。
臨床レビュー(clinical review:実際の診療に役立つよう、既存の研究をまとめた論文)にあたり、エビデンスレベルとしてはLevel 3(中等度の信頼性とされるレベル)に分類されます。
さまざまな分野で報告されているスポーツ復帰(RTS)に関する論文を集めて統合し、
StARRTモデル(StARRT model:スポーツ復帰のリスクと準備状態を段階的に評価する理論的な枠組み)や、
心理スクリーニングツール(psychological screening tools:不安や恐怖心、自信の有無など、心の準備ができているかをチェックする質問票などの道具)についても検討しています。
研究の結果
このレビューでは、まず、スポーツ復帰(RTS)の判断が、医学的な状態だけでなく、先ほどのような非臨床的プレッシャーの影響を受けやすいことが整理されています。
また、「心理的準備性(psychological readiness:再びプレーすることへの不安の強さや、自信の程度、モチベーションなど、心の面でどれだけ準備ができているか)」が、
再びけがをしてしまうリスク(再受傷リスク)や、実際のパフォーマンス(どれだけ力を発揮できるか)に大きく関わっていることもまとめられています。
このレビューで対象とした文献の検索期間は、2000年以降に発表されたものとされています。
結論:今回の研究でわかったこと
スポーツ復帰(RTS)の判断をするときに、筋力(どれだけ力が出せるか)や可動域(Range of Motion:レンジ・オブ・モーション、略してROM。関節がどこまで曲がる・伸びるか)といった身体の一部の指標だけでは、十分とは言えないと整理されています。
身体の状態だけでなく、心理的準備性(心の準備がどこまでできているか)、競技特性(そのスポーツ特有の動きや、接触の多さ、ポジションごとの負担の違いなど)も含めて、全体として評価する必要があるとされています。
そのためには、医師、理学療法士(physical therapist:運動療法などで機能回復をサポートする専門職)、トレーナー、場合によっては心理職など、複数の専門職が一緒に評価する「多職種評価」が望ましいと結論づけられています。
実際の診察ではどう考えるか
外来でスポーツ復帰の相談を受けるときには、筋力や関節の可動域(ROM)だけを見て「もう大丈夫」と判断しないことが大切になります。
身体機能(からだの動き・筋力・バランスなど)、心理的準備性(不安や恐怖心、自信の有無)、競技特性(そのスポーツならではの負担や動き方)、そして文脈要因(チーム状況、シーズンの時期、本人の目標や生活背景など)を、できるだけ総合的に見ていく視点が必要だとされています。
この記事は、そのような「統合的な評価」の考え方を共有することを目的としています。
参考文献
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Redefining Readiness – Bridging Knowledge Gaps in Return-to-Sport Criteria.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42634257/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

