この記事の要点
- 日本語タイトル:ローテーターカフ腱症でPT単独と注射併用、選ぶべき治療は?
- 英語タイトル:Functional and Neurotrophic Outcomes After Physical Therapy and Injection-Based Treatments for Rotator Cuff Tendinopathy: The FORTIS Pilot Randomized Trial.
ここで取り上げるテーマは、リハビリテーション(Physical Therapy:理学療法、以下PT)や整形外科の外来でよく問題になるものです。
専門的な内容ですが、できるだけ日常の言葉に置きかえてお話しします。
研究の背景・目的
ローテーターカフ腱症(Rotator Cuff Tendinopathy)は、肩の奥にある「ローテーターカフ」という筋肉と腱のまとまりに炎症や傷みが出る状態を指します。とくに棘上筋(きょくじょうきん:ローテーターカフの一部)の腱に問題が起きることが多く、これが続くと、慢性的な肩の痛み、腕が上げにくいなどの動きの制限、夜間の痛みや寝つきの悪さなどの睡眠障害を伴う肩の病気になります。この研究では、こうしたローテーターカフ腱症の方に対して、どのような治療が症状や生活の質の改善につながるかを調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は「ランダム化比較パイロット試験(Randomized Controlled Pilot Trial:本格的な大規模研究の前に行う、小規模なお試しの比較試験)」という方法で行われました。
まず、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像検査。放射線を使わずに体の中を詳しく写す検査)で、棘上筋腱症があることを確認した方を対象にしました。
さらに、PSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index:ピッツバーグ睡眠質問票。睡眠の質を0〜21点で評価する質問票)という検査で、5点以上の「睡眠の質があまりよくない」慢性ローテーターカフ腱症の患者さん29例を集めました。
この29例を、くじ引きのような方法で4つのグループに分け、それぞれに12週間のPT(理学療法)を行い、その後3か月間経過を追って、症状や機能の変化を評価しました。
研究の結果
4つのグループすべてで、肩の痛み、不眠の重症度、肩の動きや使いやすさといった肩の機能、そして認知機能(ものごとを考えたり処理したりする力)に、統計学的に有意な改善がみられました。
その中でも、PTに加えてPRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿。自分の血液から血小板を濃縮した注射)を併用したグループでは、肩の痛み、不眠、肩の機能が有意に改善していました(P≤.03:偶然ではないと判断できるレベルの差)。
一方、PTのみを行ったグループでは、肩の痛み、不眠の重症度、肩の機能に加えて、処理速度(情報をどれくらい速く処理できるかという認知機能の一部)も有意に改善していました(P≤.04)。
結論:今回の研究でわかったこと
この慢性ローテーターカフ腱症のランダム化比較試験では、4つのグループすべてで、肩の痛みや不眠、肩の機能が改善していました。
その中で、PTのみを行ったグループでは、BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor:脳由来神経栄養因子。脳や神経の働きや回復を支えるたんぱく質)の変化と、症状の改善とが関連していることが示されました。
一方で、注射治療は、症状の改善に役立つものの、その効果は短期間の補助的なものにとどまる可能性があると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
慢性ローテーターカフ腱症の方では、12週間しっかりと計画を立てて行う構造化PT(内容や回数をあらかじめ決めて行う理学療法)が、痛みや睡眠、肩の機能など幅広い面での改善につながり、BDNFの変化とも関係していることが示されました。
注射治療は、痛みなどを和らげる短期的で限定的な補助療法として用いられる可能性がある、という位置づけになります。
参考文献
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Functional and Neurotrophic Outcomes After Physical Therapy and Injection-Based Treatments for Rotator Cuff Tendinopathy: The FORTIS Pilot Randomized Trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42661896/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

