五十肩でIASにSSNB追加は鎮痛効果を本当に高めるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:五十肩でIASにSSNB追加は鎮痛効果を本当に高めるか?
  • 英語タイトル:Comparison of the analgesic efficacy of intra-articular steroid injections and its combination with suprascapular nerve block for adhesive capsulitis of the shoulder joint: a randomized clinical trial.

ここでは、いわゆる「五十肩」の治療について、ふだんのリハビリや整形外科の診察でよく話題になる内容を取り上げています。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつど「英語の正式名称」と「日本語での意味」を添えて、できるだけわかりやすくお話ししていきます。

目次

研究の背景・目的

五十肩は、正式には「癒着性関節包炎(Adhesive capsulitis)」と呼ばれる病気で、肩の関節を包んでいる袋(関節包)が固くなり、肩が動かしにくくなったり、強い痛みが出たりします。そのため、日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL、着替えや家事などふだんの生活動作)や、生活の質(Quality of Life:QOL、生活の快適さや満足度)が大きく下がってしまうことがあります。
一般的な治療としては、「関節内ステロイド注射(Intra-Articular Steroid injection:IAS、肩の関節の中に炎症を抑えるステロイド薬を注射する治療)」とリハビリテーション(Physical Therapy:PT、運動療法やストレッチなどのリハビリ)がよく行われています。
一方で、「肩甲上神経ブロック(Suprascapular Nerve Block:SSNB、肩の感覚を伝える肩甲上神経という神経の近くに局所麻酔薬などを注射して、痛みの伝わりを一時的に弱める治療)」を、この関節内ステロイド注射に追加すると、どれくらい痛み止めの効果が上乗せされるのかは、はっきりわかっていませんでした。
そこで、この研究では、五十肩の患者さんに対して、IASだけの場合と、IASにSSNBを追加した場合とで、痛みや肩の動きがどの程度変わるのかを比べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

この研究では、癒着性関節包炎(Adhesive capsulitis、いわゆる五十肩)の患者さん96人を対象にしました。
患者さんを無作為(Randomized、えこひいきが入らないようにくじ引きのような方法)に3つのグループに分けました。
1つ目は「IAS+PT群」で、関節内ステロイド注射(IAS)とリハビリテーション(PT)を行うグループです。
2つ目は「IAS+SSNB+PT群」で、関節内ステロイド注射(IAS)に肩甲上神経ブロック(SSNB)を追加し、さらにリハビリテーション(PT)も行うグループです。
3つ目は「PT単独群」で、リハビリテーション(PT)のみを行うグループです。
これらの患者さんを12週間(約3か月)にわたって追いかけて、主な評価として「肩痛と機能障害指標(Shoulder Pain and Disability Index:SPADI、肩の痛みの強さと、日常生活でどれくらい困っているかを点数化した質問票)」の変化を調べました。

研究の結果

関節内ステロイド注射だけを行ったIAS単独群と、関節内ステロイド注射に肩甲上神経ブロックを追加したIAS+SSNB群のどちらも、12週間のあいだに、SPADI(肩痛と機能障害指標)の点数がよくなりました。
あわせて、「VAS(Visual Analog Scale、痛みの強さを0〜10などのスケールで自分で評価する方法)」、「QuickDASH(Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand、腕・肩・手の機能障害を評価する質問票)」、「Constant-Murleyスコア(Constant-Murley score、肩の痛み・動き・力などを総合的に評価する指標)」に含まれる肩の可動域(Range of Motion:ROM、肩がどれくらい動かせるか)も、どちらのグループでも有意に改善していました。
2つのグループを比べたときに、はっきりした違いが見られたのは、「治療開始2週目のSPADI」と「治療直後のVAS(痛みの自己評価)」だけでした。
この結果から、肩甲上神経ブロック(SSNB)を追加した場合でも、長い目で見たときの上乗せ効果は小さいと判断されました。

結論:今回の研究でわかったこと

関節内ステロイド注射(IAS)だけの場合と、IASに肩甲上神経ブロック(SSNB)を追加した場合のどちらでも、五十肩の痛みや肩の機能は改善していました。
ただし、SSNBを追加したからといって、長期的にみて大きく差がつくという結果ではなく、長期的な上乗せ効果はあまり大きくないと考えられました。
そのため、SSNBは、特に痛みが強い方に対して、短い期間の痛みを和らげる目的で使うのが妥当といえる内容でした。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察では、五十肩の治療は、まず「関節内ステロイド注射(IAS)とリハビリテーション(PT)の組み合わせ」を基本として考えることが多いです。
そのうえで、夜間の痛みが強くて眠れない場合など、特に痛みがつらい方については、短期間の痛みを和らげる「ブースト(追加の一押し)」として、肩甲上神経ブロック(SSNB)を追加するかどうかを、選択肢のひとつとして検討する、という位置づけになります。


参考文献

  • Comparison of the analgesic efficacy of intra-articular steroid injections and its combination with suprascapular nerve block for adhesive capsulitis of the shoulder joint: a randomized clinical trial.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39709187/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

でのお身体のご相談は当院へ。

健康寿命・社会寿命を
最大限に延伸する

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次