TKAとUKA後に低負荷スポーツへ復帰できる割合は?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:TKAとUKA後に低負荷スポーツへ復帰できる割合は?
  • 英語タイトル:High rate of return to low-impact physical activity or sports after total and unicompartmental knee arthroplasty: A systematic review with meta-analysis.

ここでは、膝の手術を受けたあとに、どのくらいの方がスポーツや運動に戻れているかをまとめた研究を紹介します。
リハビリテーション(Rehabilitation:けがや病気のあとに、体の機能や生活を取り戻すための訓練)や、整形外科(Orthopedics:骨・関節・筋肉・靱帯など運動器の病気を診る診療科)の外来で、よく話題になる内容です。
専門用語はできるだけかみくだいてお話ししますので、気になるところだけ読んでいただいても大丈夫です。

目次

研究の背景・目的

変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis:膝の軟骨がすり減って痛みや変形が出る病気)の患者さんでは、痛みが強くなると、人工膝関節置換術(Knee Arthroplasty:傷んだ膝の関節を金属や樹脂の人工関節に置き換える手術)を行うことがあります。
人工膝関節置換術には、膝全体を置き換える全人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)と、膝の一部だけを置き換える単顆人工膝関節置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:UKA)があります。
ただ、これらの手術を受けたあとに、どのくらいの人が運動やスポーツに戻れているのか、いつ頃から戻れるのか、そしてTKAとUKAで違いがあるのかについて、数字としてはっきり示した研究はまだ多くありませんでした。
そこで、この研究では、人工膝関節置換術後の運動への復帰率(どのくらいの人が戻れているか)や復帰までの期間、TKAとUKAの違いを、数字で整理して明らかにすることを目的としました。

調査の方法(対象など)

医学論文データベースであるPubMed(パブメド:世界中の医学論文を検索できるサイト)などを使って、人工膝関節置換術後の運動復帰について報告している研究を、決まった手順で広く探しました(これを系統的レビュー:Systematic Reviewといいます)。
見つかった研究から、「どのくらいの人が運動に戻れたか(復帰率)」「手術からどのくらいの期間で戻れたか(復帰時期)」「TKAとUKAで復帰のしやすさに差があるか」といったデータを集めました。
そのうえで、メタ解析(Meta-analysis:複数の研究結果を統計的にまとめて、全体としての傾向を数字で示す方法)という手法を使って、これらのデータを統合して解析しました。

研究の結果

全体として、人工膝関節置換術を受けた方のうち、およそ8〜9割の方が、手術後数か月のあいだに、ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの「低負荷運動(Low-impact activity:膝への衝撃が比較的少ない運動)」に復帰していました。
また、TKA(膝全体を置き換える手術)を受けた方よりも、UKA(膝の一部だけを置き換える手術)を受けた方のほうが、低負荷運動への復帰率は低めではなく、むしろ高い傾向がみられました。
身体活動スコア(Physical Activity Score:どのくらい体を動かせているかを点数化したもの)や、手術に対する満足度についても、多くの方でおおむね高い値が報告されていました。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究では、全人工膝関節置換術(TKA)よりも、単顆人工膝関節置換術(UKA)のほうが、低負荷スポーツへの復帰率が高いことが示されました。
また、人工膝関節置換術を受けた多くの方が、手術後数か月以内に、膝への負担が比較的少ない運動やスポーツに戻れていることがわかりました。

実際の診察ではどう考えるか

診察の場では、一般的に、全人工膝関節置換術(TKA)よりも、単顆人工膝関節置換術(UKA)のほうが、低負荷の運動には復帰しやすいと考えられます。
一方で、ランニングやジャンプを多く含む競技などの高衝撃スポーツ(High-impact sports:膝に強い衝撃がかかる運動)は、人工関節への負担を考えて控える傾向があります。
そのため、「どのくらいの強さの運動をしたいのか」「どんなスポーツに戻りたいのか」といった、患者さん一人ひとりの活動目標をうかがったうえで、手術方法や術後の運動について、丁寧に説明していくことが大切になります。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

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