この記事の要点
- 日本語タイトル:ACL再建後サッカー選手は元の競技レベルへ復帰可能か?
- 英語タイトル:High return to play but low return to preinjury level after anterior cruciate ligament reconstruction in soccer players: A systematic review with meta-analysis.
ここで取り上げるのは、整形外科やリハビリテーションの外来でよく話題になるテーマです。
できるだけ専門用語をかみくだいて、日常の診察でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
「ACL」とは「Anterior Cruciate Ligament(前十字靱帯)」という、膝の中にある靱帯のことです。サッカーのように急な方向転換やジャンプ、着地が多いスポーツでは、この前十字靱帯が切れてしまうことがあります。
前十字靱帯が切れたあとに行う手術が「ACL再建術(前十字靱帯再建術)」です。サッカー選手にとっては、「またサッカーに戻れるのか」「元のレベルでプレーできるのか」が一番気になるところです。
ただし、どのくらいの選手がサッカーに戻れているのか、元のレベルまで戻れる人はどのくらいいるのか、復帰までに平均どれくらい時間がかかるのか、さらにもう一度ACLをケガしてしまう「再受傷(再び前十字靱帯を損傷すること)」の危険性がどの程度なのか、といった数字の情報は、これまで十分にはまとまっていませんでした。
そこで、この研究では、ACL再建術を受けたサッカー選手について、復帰の状況や再受傷のリスクを、できるだけ具体的な数字で整理することを目的としました。
調査の方法(対象など)
対象は、サッカー選手に限定して行われた「ACL再建術後」の研究です。
複数の研究を集めてまとめて評価する方法を「系統的レビュー(systematic review、一定のルールで文献を集めて評価する方法)」といい、その結果を統計的にまとめて一つの数字として示す方法を「メタ解析(meta-analysis、複数研究の結果を統合して解析する方法)」といいます。
この系統的レビューとメタ解析を用いて、次のような項目を調べました。
・「競技復帰率(RTP:Return to Play、何らかのレベルでサッカーに戻れた人の割合)」
・「復帰までの期間(手術からサッカーに戻るまでにかかった時間)」
・「ケガ前レベル復帰率(ケガをする前と同じレベルのサッカーに戻れた人の割合)」
・「二次ACL損傷率(二次ACL損傷:手術後に、同じ膝や反対側の膝で、もう一度前十字靱帯を損傷してしまう割合)」
これらの数字を、「性別(男性・女性)」と「競技レベル(エリート選手か、非エリート選手か)」ごとに分けて解析しました。
研究の結果
ACL再建術を受けたサッカー選手について、何らかのレベルでサッカーに復帰できた人は、全体で約83%でした。つまり、多くの選手は、形はどうあれサッカーには戻れているという結果でした。
一方で、ケガをする前と同じレベルのサッカーに戻れた人は、約60%でした。元のレベルまで完全に戻るのは、全員ではなく、およそ6割程度にとどまっていました。
サッカーに復帰した時期は、平均すると手術から約9か月後でした。もちろん個人差はありますが、目安としてはこのくらいの期間がかかっていました。
また、二次ACL損傷率、つまりもう一度前十字靱帯をケガしてしまった人の割合は、約15%と比較的高い数字でした。特に、女性選手と、トップレベルではない「非エリート」の選手で、この再受傷のリスクが高い傾向がみられました。
結論:今回の研究でわかったこと
ACL再建術を受けたサッカー選手は、多くの人がサッカーには戻れていますが、ケガ前と同じレベルまで戻れているのは約6割という結果でした。
そのため、「復帰できるかどうか」だけでなく、「どのレベルまで戻れる可能性があるのか」をあらかじめ理解しておくことが大切と考えられます。
また、性別(男性か女性か)や競技レベル(エリートか非エリートか)によって、再受傷のリスクなどが違う傾向があるため、こうした背景をふまえて、客観的な基準(筋力や動きのテストなどの機能評価)を使いながら、復帰のタイミングを判断していくことが重要とされています。
実際の診察ではどう考えるか
実際に外来でACL再建術後のサッカー復帰について相談するときには、「サッカーに戻れる人が多い」という点だけでなく、「元のレベルに戻れるのは約6割」「二次ACL損傷のリスクは約15%」といった具体的な数字もお伝えすることが大切だと考えられます。
そのうえで、性別や競技レベルによってリスクが違う可能性があることを共有し、筋力やバランス、動き方などの機能をしっかり評価しながら、一人ひとりに合った基準で復帰のタイミングを一緒に考えていく、というイメージになります。
参考文献
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High return to play but low return to preinjury level after anterior cruciate ligament reconstruction in soccer players: A systematic review with meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41566832/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















