この記事の要点
- 日本語タイトル:産後腹直筋離開に運動と物理療法併用は有効か?
- 英語タイトル:Physiotherapy with kinesiotherapy and physical agents to reduce postpartum diastasis recti: a randomised trial.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科などで、産後の方を診るときによく話題になるテーマです。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の外来でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
「腹直筋(ふくちょくきん:Rectus abdominis)」は、お腹の前側を縦に走る筋肉で、いわゆる「腹筋」の中心になる筋肉です。
妊娠・出産のあと、この左右の腹直筋のすき間が広がったままになる状態を「腹直筋離開(ふくちょくきんりかい:Diastasis recti)」と呼びます。
腹直筋離開があると、腰痛(ようつう:Low back pain)や、体幹(たいかん:胴体まわり)の安定しにくさの一因になると考えられています。
この研究では、
・「運動療法(うんどうりょうほう:Therapeutic exercise/Kinesiotherapy)」=専門家の指導のもとで行うリハビリ用の体操や筋トレ
・「物理療法機器(ぶつりりょうほうきき:Physical agents)」=電気刺激や温熱など、機械を使って行う治療
のどれが有効かを調べるために、運動療法だけ、物理療法機器だけ、そして両方を組み合わせた場合を比べて検証した研究です。
調査の方法(対象など)
出産後6か月の時点で腹直筋離開がある女性60名を対象にしました。
この60名を、くじ引きのような方法で3つのグループに分ける「無作為割付(むさくわりつけ:Randomisation)」という方法で分けています。
1つ目のグループは運動療法だけ、2つ目は物理療法機器だけ、3つ目は運動療法と物理療法機器の両方を組み合わせて行いました。
効果をみるために、「超音波検査(ちょうおんぱけんさ:Ultrasound)」という、妊婦健診などでも使う体に負担の少ない検査機器を使って、
・「IRD(Inter‑Rectus Distance:腹直筋間距離)」=左右の腹直筋のすき間の幅
・おへそより下のあたりの「お腹まわりの周径(しゅうけい:Circumference)」
を測定して、治療前後でどのくらい変化したかを比べました。
研究の結果
運動療法と物理療法機器を組み合わせた「併用群」では、
・物理療法機器だけのグループと比べて、おへその上の部分の腹直筋間距離(臍上IRD)が、約0.8センチ多く狭くなっていました。
・運動療法だけのグループと比べて、おへその下の部分の腹直筋間距離(臍下IRD)が、約0.7センチ多く狭くなっていました。
さらに、併用群では、おへその下あたりの「お腹まわりの周径」も、ほかのグループより大きく減少していました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究の範囲では、産後の腹直筋離開に対して、
・運動療法だけ
・物理療法機器だけ
よりも、
・運動療法と物理療法機器を組み合わせて行う方法のほうが、
左右の腹直筋のすき間(IRD)と、下腹部の周径をより改善する可能性がある、という結果でした。
あくまで「可能性」を示した研究であり、すべての方に同じ効果が出るとまでは言い切れませんが、治療方法を考えるうえで参考になる内容です。
実際の診察ではどう考えるか
産後の腹直筋離開が気になる場合、自己流の腹筋運動だけで対応するのではなく、
理学療法士(りがくりょうほうし:Physiotherapist)などの専門家による運動指導と、物理療法機器を組み合わせる方法を選択肢の一つとして検討することが有用と考えられます。
実際にどのような運動や機器を使うかは、症状や体調、生活状況によって変わりますので、医師やリハビリスタッフと相談しながら決めていくことが大切です。
参考文献
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Physiotherapy with kinesiotherapy and physical agents to reduce postpartum diastasis recti: a randomised trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41575021/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















