この記事の要点
- 日本語タイトル:進行がん疼痛に対し非薬物リハ併用で痛みとQOLは改善するか?
- 英語タイトル:Multimodal Rehabilitation for Advanced Cancer Pain: a Narrative Review of Emerging Nonpharmacological Strategies.
ここで取り上げる内容は、がんの患者さんを診るリハビリテーション科や整形外科などで、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、普段の診察室でお話しするような言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
進行したがんをお持ちの患者さんの多くは、日常生活に影響する「中等度以上」の強さの痛みを抱えています。世界保健機関(World Health Organization、WHO)が提唱している「WHO方式がん疼痛治療法(WHO方式鎮痛薬)」は、痛み止めの薬を段階的に使っていく方法で、多くの方に効果があります。一方で、長く使ううちに薬が効きにくくなる「耐性」や、便秘などの副作用が問題になることがあります。そのため、薬だけに頼らず、薬を使わない方法も含めた、リハビリテーション(身体や心の機能を保つ・回復させるための総合的なケア)を組み合わせていく必要性が高まっている、という背景があります。
調査の方法(対象など)
進行したがんによる痛みがある患者さんを対象にした研究を集めて調べました。内容としては、理学療法(Physical Therapy、関節や筋肉を動かす訓練や運動療法など)、運動プログラム、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy、考え方や行動のクセを見直してストレスや痛みへの対処を学ぶ心理療法)、鍼やマッサージなどの補完療法(通常の医療を補う治療法)、さらにVR(Virtual Reality、仮想現実:ゴーグルなどを使って仮想空間を体験する技術)やAI(Artificial Intelligence、人工知能:コンピュータが学習して判断や予測を行う技術)を使ったアプリを併用した研究を対象に、「ナラティブレビュー(Narrative Review、研究結果をまとめて全体像をわかりやすく整理する総説の一種)」として整理しました。
研究の結果
運動を取り入れた介入では、痛みの強さがおおよそ20〜30%ほど下がり、あわせて身体機能(体の動きやすさ、体力など)も改善していました。心理的な介入では、痛みによるつらさの感じ方や、不安・抑うつ(気分の落ち込み)が20〜30%ほど和らいでいました。また、鍼やマッサージといった補完療法でも、痛みを数値で表す指標であるVAS(Visual Analogue Scale、視覚的アナログ尺度)の値が下がり、睡眠の状態やQOL(Quality of Life、生活の質:日常生活のしやすさや満足度などを示す指標)も改善していることが示されていました。
結論:今回の研究でわかったこと
進行したがんによる痛みでは、痛み止めの薬だけでは十分に対応しきれない場合があることが示されています。そのため、運動療法、心理的なサポート、鍼やマッサージなどの補完療法を組み合わせて行うことで、痛みとQOL(生活の質)を「中等度」といえる程度まで改善できる可能性があることが示唆されています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診察では、痛み止めの薬を増やす前に、運動療法や心理的な介入、鍼やマッサージなどの補完療法を組み合わせてご提案する、という考え方が一つの戦略になります。特にご高齢の方や、すでに多くの薬を飲んでおられる方では、薬の副作用を増やさないようにするためにも、薬を使わない治療(非薬物療法)の優先度を高めて検討することが有用であると考えられます。
参考文献
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Multimodal Rehabilitation for Advanced Cancer Pain: a Narrative Review of Emerging Nonpharmacological Strategies.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41579249/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















