この記事の要点
- 日本語タイトル:高齢骨折患者の退院後に患者ナビゲーターは有用か?
- 英語タイトル:Investigating patient navigator impact on older adults’ transitions from acute care: A randomized controlled trial with embedded qualitative component.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科の外来・入院で、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつど「英語の正式名称」と「日本語での意味」を説明しながら、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
研究の背景・目的
高齢の方が転んで骨折するケースは年々増えてきています。
退院してから3か月以内に、予定していなかった受診(急な外来受診や救急受診など)が多いこともわかっています。
そこで、「患者ナビゲーター(patient navigator)」という役割を持つスタッフを導入する意味があるかどうかを調べました。
患者ナビゲーターとは、患者さんやご家族と医療機関・介護サービスなどのあいだに入り、情報を整理したり、相談に乗ったりして、橋渡しをする人のことを指します。
この研究では、高齢の骨折患者さんが急性期病院を退院したあと、患者ナビゲーターが関わることでどのような影響があるかを検証することが目的でした。
調査の方法(対象など)
対象は、65歳以上で骨折のために入院した患者さんです。
研究の方法は「オープンラベルRCT(Randomized Controlled Trial、無作為化比較試験)」という手法が使われました。
無作為化比較試験とは、患者さんをくじ引きのような方法でグループに分けて、どちらの治療や支援がより良いかを公平に比べる研究方法です。
「オープンラベル」とは、患者さんも医療者も、どちらのグループに入っているかを知っている状態で行う試験という意味です。
さらに、「質的研究(qualitative study)」といって、数字だけでなく、患者さんや家族の声・体験・感想などを詳しく聞き取る方法も組み合わせて行われました。
具体的には、通常どおりの医療や支援を受ける「標準ケア群」と、そこに患者ナビゲーターの支援が加わる「ナビゲーター群」の2つを比較しました。
研究の結果
まず、「フレイル(frailty)」という概念が使われています。
フレイルとは、高齢になって筋力や体力、認知機能(ものごとを考えたり判断したりする力)などが弱くなり、病気やけがをきっかけに生活機能が大きく落ちやすい状態を指します。
この研究では、フレイルの程度が「軽度〜中等度」の患者さんでは、ナビゲーター群のほうが、退院後の予定外受診が少ない傾向がみられました。
一方で、「高度フレイル(重度のフレイル)」の患者さんでは、ナビゲーター群で予定外受診が増えていました。
ただし、これは「不要な受診が増えた」というよりも、「必要な医療につながるのが早くなった」と解釈されています。つまり、具合が悪くなったときに、我慢しすぎず早めに受診できた可能性がある、という見方です。
また、患者さんやご家族の満足度については、標準ケア群とナビゲーター群のあいだで大きな差はみられませんでした。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究から、患者ナビゲーターによる支援は、軽いフレイルのある高齢の骨折患者さんでは、退院後の予定外受診を減らす可能性があると考えられました。
一方で、重度のフレイルがある患者さんでは、ナビゲーターが関わることで、必要な受診を早めに促す可能性があると示されています。
つまり、フレイルの程度によって、ナビゲーターの役割や効果の出方が少し違う可能性がある、という結果でした。
実際の診察ではどう考えるか
日常診療の場では、患者さんのフレイルの程度や、ご家族・介護者からの支援がどのくらいあるかを踏まえて、患者ナビゲーターをどの方に導入するかを考えることが大切とされています。
また、退院してから「困ったときにどこへ連絡すればよいか」がはっきりしていることが、安心して在宅生活に移行するうえで重要です。
そのため、退院前の段階から、患者さんとご家族に対して、連絡窓口や相談先を明確にしておくことが、安全に在宅や施設へ移行していくための鍵になると考えられています。
参考文献
-
Investigating patient navigator impact on older adults’ transitions from acute care: A randomized controlled trial with embedded qualitative component.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41637440/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















