この記事の要点
- 日本語タイトル:初回肩関節脱臼に最適な固定と手術適応は?
- 英語タイトル:Management of first-time shoulder dislocations: A survey of sport medicine physician perceptions.
ここで取り上げる「初回肩関節脱臼(はじめて起こる肩の関節の脱臼)」は、リハビリテーション(Rehabilitation:機能回復のための訓練)や整形外科の外来でよく出てくる話題です。
専門的な内容も出てきますが、できるだけ日常の診察でお話しするような、わかりやすい言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
初回肩関節脱臼は、特に若いスポーツ選手に起こりやすいけがです。
一度脱臼すると、もう一度外れてしまう「再脱臼」のリスクがどのくらいあるか、いつ頃スポーツに復帰してよいか、という点が問題になります。
また、「保存療法(Surgical non-operative treatment:手術をせず、固定やリハビリで治す方法)」で様子を見るか、「早期手術(Early surgery:比較的早い段階で手術を行うこと)」を選ぶかについて、医師のあいだでも考え方が分かれやすい病気です。
この研究は、そうした治療方針の違いを明らかにすることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究では、肩の不安定症(Shoulder instability:肩の関節が外れやすい、ぐらつきやすい状態)を診ている世界各国のスポーツ整形外科医(Sports orthopaedic surgeon:スポーツによるけがを専門に診る整形外科医)を対象にしました。
オンラインの質問票(インターネット上のアンケート)を用いて、
・初めて肩を脱臼した患者さんをどのくらいの期間固定しているか
・どのような内容のリハビリを行っているか
・どのような条件で手術を勧めるか(手術適応)
・どの画像検査(X線、CT、MRIなど)を選ぶか
といった点を調べた「横断研究(Cross-sectional study:ある時点での実態を調べる研究)」です。
研究の結果
初めて肩を脱臼した場合、多くの医師は「1〜3週間ほど肩を固定する」治療を行っていました。
そのうえで、筋力訓練(Muscle strengthening:肩や肩周りの筋肉を鍛える運動)と、プロプリオセプション訓練(Proprioception training:自分の関節や体の位置を感じ取る能力を鍛える訓練。バランス感覚や素早い反応を高める目的のリハビリ)を組み合わせる「保存療法」が主な選択肢となっていました。
一方で、手術を検討する大きな理由としては、
・骨損傷(Bone defect:肩の骨が欠けたり、削れたりしている状態)
・若年(Young age:年齢が若いこと)
・コンタクトスポーツ(Contact sports:ラグビーやアメフトなど、体と体がぶつかるスポーツ)をしていること
が主な要因として挙げられていました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究から、初めて肩を脱臼した場合には、1〜3週間の固定を行い、その後に筋力訓練とプロプリオセプション訓練を重視したリハビリを行うという治療方針が、多くの医師のあいだで一般的になっていることがわかりました。
また、骨損傷があるかどうか、患者さんが若いかどうか、コンタクトスポーツをしているかどうかが、手術を行うかどうかを判断するうえで重要なポイントになっていると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診察では、初回肩関節脱臼に対して、どのくらいの期間固定するか、どのような内容のリハビリを行うかについて、ある程度の「標準的なやり方」を持っておくことが役に立つと考えられます。
そのうえで、画像検査などで骨損傷の有無を確認し、患者さんの年齢や、行っているスポーツの種類・競技レベル(特にコンタクトスポーツかどうか)を踏まえて、手術を勧めるかどうかを個別に判断していくことが大切になります。
参考文献
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Management of first-time shoulder dislocations: A survey of sport medicine physician perceptions.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41649233/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
















