COVID-19重症例退院後にECCは標準リハより有効か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:COVID-19重症例退院後にECCは標準リハより有効か?
  • 英語タイトル:Eccentric cycling is superior to standard rehabilitation for Post-ICU recovery in COVID-19 survivors.

ここでは、リハビリテーションや整形外科の外来でもよく話題になる内容を取り上げています。
できるだけ専門用語をかみくだいて、日常の診察でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」で重症となり集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)に入院したあと、退院してからも続くさまざまな不調を「PICS(Post-Intensive Care Syndrome:集中治療後症候群)」と呼びます。
このPICSのある患者さんでは、筋力(筋肉の力)や歩く力、日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living/食事・トイレ・着替えなどふだんの生活動作)、生活の質(QOL:Quality of Life/生活の満足度や快適さ)が長く低下したまま続くことが知られています。
一般的な「標準的リハビリテーション(標準リハ)」は、ある程度長い時間、運動を続ける必要があり、そのぶん心臓や肺への負担(心肺負荷)が大きくなり、強い疲労感につながることがあります。
この研究では、そうしたCOVID-19後のPICS患者さんに対して、
「ECC(Eccentric Cycling:エキセントリックサイクリング/ペダルが回るのに抵抗しながらこぐ、自転車こぎの一種)」という運動方法が、標準リハと比べてどう違うのかを調べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

COVID-19から回復し、生存された方20名を対象にした「ランダム化クロスオーバー試験(Randomized Crossover Trial:参加者が順番を変えながら両方の治療法を体験し、比較する研究方法)」が行われました。
この研究では、同じ人が「ECC(エキセントリックサイクリング)」と「標準的リハビリテーション」を、それぞれ8週間ずつ行いました。
そのうえで、歩く距離や動作のスピード、日常生活動作の自立度などの「機能指標(体の働きを数字で評価するもの)」を比べています。

研究の結果

ECC(エキセントリックサイクリング)は、標準的リハビリテーションと比べて、心臓や肺への負担(心肺負荷)が低い状態で行うことができました。
そのうえで、
・「6分間歩行距離(6-minute walk test:6分間でどれだけ歩けるかをみる検査)」
・「Timed Up and Go(タイムド・アップ・アンド・ゴー:椅子から立ち上がり、少し歩いて戻って座るまでの時間を測るテスト)」
・「Barthel Index(バーセルインデックス:食事・トイレ・移動など日常生活動作の自立度を点数化した指標)」
といった評価項目で、標準リハよりも改善の幅が大きいという結果でした。
また、同じ時間あたりでみると、ECCのほうが効率よく機能を高められる可能性が示されています。

結論:今回の研究でわかったこと

COVID-19後のPICS(集中治療後症候群)の患者さんでは、ECC(エキセントリックサイクリング)は、標準的リハビリテーションと比べて、歩く力や日常生活動作(ADL)を、より効率的に改善しうるという結果でした。
つまり、心肺への負担を抑えながら、歩行やふだんの生活動作の回復を目指す一つの方法になりうると考えられています。

実際の診察ではどう考えるか

心臓や肺への負担(心肺負荷)が心配な方や、少し動いただけでも強い疲労を感じやすいPICS(集中治療後症候群)の患者さんでは、ECC(エキセントリックサイクリング)を、リハビリを始める早い段階からの有力な選択肢の一つとして検討する価値があると考えられます。
どのリハビリ方法が合うかは、病状や体力によって変わりますので、実際には主治医やリハビリスタッフと相談しながら決めていくことが大切です。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

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