この記事の要点
- 日本語タイトル:ACL再建後リハに全身振動を足すと着地安定性は向上するか?
- 英語タイトル:Effect of whole-body vibration combined with exercise therapy on jump-landing stability after ACL reconstruction: A randomized controlled trial.
ここでは、前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL)という膝の中の靱帯を再建する手術を受けたあとのリハビリについてのお話をします。スポーツ整形外科やリハビリの現場でよく話題になる内容を、できるだけ専門用語をかみくだいてお伝えします。
研究の背景・目的
ACL(前十字靱帯)再建手術を受けたアスリートでは、筋力そのものが戻ってきたあとでも、ジャンプして着地するときのぐらつきや不安定さが、再びケガをしてしまうリスクにつながるとされています。全身振動トレーニング(Whole Body Vibration:WBV、全身に細かい振動刺激を与えるトレーニング)は、神経と筋肉の連携(神経筋制御)を良くする可能性があると考えられていますが、ふだん行うリハビリにこれを追加したときに、本当に上乗せの効果があるかどうかは、はっきりしていませんでした。
調査の方法(対象など)
この研究はランダム化単盲検RCT(Randomized Controlled Trial:無作為化比較試験、患者さんをくじ引きのように2つのグループに分けて比べる方法)という形で行われました。ACL再建手術後のアスリート30名を、全身振動トレーニング(WBV)を通常の運動療法に追加するグループと、運動療法だけを行うグループに分けました。介入(トレーニング)を始める前と終わったあとで、TTS(Time to Stabilization:着地してから安定するまでの時間)、YBT(Y Balance Test:Y字バランステスト、片脚立ちで手を伸ばしてバランスを見る検査)、6mホップ由来LSI(Limb Symmetry Index:左右対称性指標、6m片脚ホップの左右差を見る指標)を比べました。
研究の結果
全身振動トレーニング(WBV)を追加したグループでは、前後方向のTTSと、いくつかの方向をまとめた合成TTSが有意に短くなり、効果の大きさも大きいと評価されました。一方で、運動療法だけのグループでは、TTSに明らかな変化は見られませんでした。YBT(Y字バランステスト)とLSI(左右対称性指標)は、どちらのグループでも有意に良くなりましたが、2つのグループのあいだで差は見られず、またグループと時間の組み合わせによる特別な効果(交互作用)も認められませんでした。つまり、YBTとLSIの改善の程度は、通常のリハビリだけの場合とほぼ同じと判断されました。
結論:今回の研究でわかったこと
ACL再建後のアスリートでは、通常のリハビリに全身振動トレーニング(WBV)を追加すると、TTS(着地してから安定するまでの時間)については、追加の効果がある可能性が示されました。一方で、YBT(Y字バランステスト)やLSI(左右対称性指標)については、標準的な運動療法だけでも十分に改善が期待できるという結果でした。
実際の診察ではどう考えるか
ACL再建後で、特にジャンプして着地するときの安定性が重要になる競技(ジャンプ動作が多いスポーツなど)の場合には、通常のリハビリに全身振動トレーニング(WBV)を追加する、という選択肢が考えられます。一方で、全身のバランス能力や左右の脚のバランス(左右対称性)については、標準的な運動療法だけでも十分に改善が見込める点を押さえておくことが大切です。
参考文献
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Effect of whole-body vibration combined with exercise therapy on jump-landing stability after ACL reconstruction: A randomized controlled trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41666209/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

















