この記事の要点
- 日本語タイトル:高齢者大腿骨近位部骨折後リハは遠隔でも対面同等以上か?
- 英語タイトル:Application of telerehabilitation in home care for older adult patients with postoperative hip fractures: A scoping review.
ここで取り上げるのは、リハビリテーション(Rehabilitation:けがや病気のあとに、体の機能や生活動作を取り戻すための訓練)や整形外科(Orthopedics:骨や関節、筋肉など運動器の病気をみる診療科)の現場で、よく問題になるテーマです。
専門的な内容も出てきますが、できるだけ日常の外来でお話しするような言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
高齢の方に多い「大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ:太ももの付け根の骨折)」が世界的に増えています。
手術のあとには、歩く練習や筋力トレーニングなどの術後リハビリテーションがとても大切ですが、
・通院するのが体力的・交通手段的にむずかしい
・家族の付き添いの負担が大きい
といった理由で、リハビリが途中で中断されてしまうことが問題になっています。
そこで、病院や施設に通わず、自宅にいながらテレビ電話などを使って行う「遠隔リハビリテーション(Telerehabilitation:インターネットや通信機器を使って行うリハビリ)」がどのくらい役に立つのかを整理するために行われた「スコーピングレビュー(Scoping review:関連する研究を幅広く集めて、全体像を整理するタイプの文献レビュー)」です。
調査の方法(対象など)
いくつかの医学データベース(医学論文を集めた検索システム)を使って、2025年8月までに発表された論文を調べました。
対象としたのは、自宅で遠隔リハビリテーションを受けた「高齢者の大腿骨近位部骨折の手術後の患者さん」を扱った研究です。
条件に合う18本の研究を選び出し、次のような点を評価していました。
・股関節機能(こかんせつきのう:足の付け根の関節がどれくらい動くか、力が出るか)
・歩行(ほこう:どれくらいの距離や速さで歩けるか、歩き方の安定性など)
・QOL(Quality of Life:生活の質。日常生活のしやすさや満足度)
・痛みの程度
・抑うつ(よくうつ:気分の落ち込みや意欲の低下など、うつ状態の症状)
・運動継続率(うんどうけいぞくりつ:指示された運動やリハビリをどれくらい続けられたか)
研究の結果
遠隔リハビリテーションを行ったグループは、比較対象のグループ(対照群:通常の対面リハビリなどを受けたグループ)と比べて、
・股関節の機能
・歩く力
・QOL(生活の質)
・痛み
・抑うつ症状(気分の落ち込みなど)
といった点で、全体としては良い方向の結果を示す傾向がありました。
特に、「運動継続率(リハビリをどれくらい続けられたか)」については、遠隔リハビリのほうがはっきりと良い結果を示した研究が多くみられました。
このことから、自宅という慣れた環境でも、体の機能を保ちながら、気持ちの面も含めて支えていける可能性があると考えられています。
結論:今回の研究でわかったこと
今回まとめられた研究では、遠隔リハビリテーションは、股関節の機能や歩行能力、QOL(生活の質)、痛み、抑うつ症状といった面で、全体としては「対面でのリハビリと同じくらいか、それ以上の成績を示すことが多い」という傾向がみられました。
そのため、通院がむずかしい患者さんでは、手術後の早い段階から、対面リハビリに遠隔リハビリを組み合わせていくことが、選択肢のひとつとして役に立つ可能性があると考えられています。
実際の診察ではどう考えるか
通院が大変な高齢の患者さんの場合、病院や施設での対面リハビリだけに頼るのではなく、早い時期から遠隔リハビリテーションを一緒に取り入れることで、
・股関節や足の機能の回復を支える
・自宅でも運動を続けやすくする
といった効果が期待できる可能性があります。
その結果として、再び転んでしまうこと(再転倒)や、動かないことで筋力や体力が落ちてしまう「廃用(はいよう:使わないことで体の機能が弱っていくこと)」を防ぐためのひとつの戦略になりうると考えられています。
参考文献
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Application of telerehabilitation in home care for older adult patients with postoperative hip fractures: A scoping review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41678454/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

















