この記事の要点
- 日本語タイトル:LRR後リハで低負荷BFR追加は筋力改善に有効か?
- 英語タイトル:Rehabilitation efficacy of Low-Load blood flow restriction training for lateral patellar compression syndrome.
ここでは、膝(ひざ)の手術後のリハビリでよく話題になるテーマを取り上げています。
専門的な内容ですが、できるだけ日常の外来でお話しするような、わかりやすい言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
「外側膝蓋骨圧迫症候群(lateral patellar compression syndrome)」という病気があります。
これは、膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)の外側に負担がかかりすぎて、痛みが出たり動かしにくくなったりする状態です。
この病気に対して「LRR(Lateral Retinacular Release、外側支帯解離術)」という手術を行ったあと、多くの方で痛みのために重い負荷の筋トレがやりにくくなり、その結果として太ももの筋力低下が問題になりやすいとされています。
そこで、この研究では「低負荷血流制限トレーニング(Blood Flow Restriction training:BFR、血流制限トレーニング)」という方法をリハビリに応用できるかどうかが検討されました。
血流制限トレーニングとは、専用のベルトなどで太ももの血流を少し制限した状態で、比較的軽い重さで筋トレを行う方法で、低い負荷でも筋力アップが期待できるとされているトレーニングです。
調査の方法(対象など)
LRR(外側支帯解離術)を受けた患者さんを対象に、2つのグループに分けました。
1つは、通常どおりのリハビリを行う「通常リハビリ群」、もう1つは、通常リハビリに加えて低負荷血流制限トレーニングを行う「低負荷血流制限トレーニング群」です。
どちらのグループに入るかは、患者さんごとにくじ引きのような方法(無作為割付:むさくいわりつけ)で決められました。
4週間リハビリを行ったあとに、次のような項目を比べました。
・膝を伸ばす力(膝伸展筋力)
・太ももの内側の筋肉である「内側広筋(vastus medialis)」の厚さ(筋厚)
・太ももの太さ(大腿周径)
・痛みの強さを0~10などの数字で表す「VAS(Visual Analog Scale、視覚的アナログ尺度)」
・膝の痛みや安定性、日常生活での困りごとなどを点数化した「Lysholmスコア(Lysholm knee scoring scale)」
これらを、2つのグループで比較検討しました。
研究の結果
低負荷血流制限トレーニングを行ったグループでは、通常リハビリだけのグループと比べて、膝を伸ばす力(膝伸展筋力)がより大きく増えていました。
また、内側広筋(太ももの内側の筋肉)の厚さや、太ももの太さ(大腿周径)も、低負荷血流制限トレーニング群のほうが増え方が大きい結果でした。
痛みの強さを表すVASと、膝の状態を点数化したLysholmスコアについては、統計学的に「はっきりと差がある」とまでは言えない結果でしたが、「MCID(Minimal Clinically Important Difference、患者さんが『良くなった』と実感しやすい最小の変化量)」と呼ばれる基準を超える改善がみられました。
結論:今回の研究でわかったこと
LRR(外側支帯解離術)のあと、早い時期から行うリハビリに低負荷血流制限トレーニング(BFR)を追加すると、4週間という比較的短い期間でも、膝を伸ばす筋力と筋肉の量が統計学的に有意に増える可能性が示されました。
また、痛みの強さ(VAS)や膝の機能を表すLysholmスコアについても、統計学的な差はつかなかったものの、患者さんが変化を実感しやすいとされるMCIDを超える改善がみられる可能性が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療では、LRR(外側支帯解離術)のあと、できるだけ早い段階から低負荷血流制限トレーニングをリハビリに取り入れることが1つの選択肢になりえます。
ただし、血流を制限する方法なので、血管の病気や血栓(血のかたまり)のリスクなど、行ってはいけない条件(禁忌)がないかを事前にしっかり確認することが大切です。
そのうえで、痛みで強い負荷のトレーニングが難しい時期でも、筋力と筋肉量をできるだけ保つことを優先するリハビリ戦略として、有用と考えられます。
参考文献
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Rehabilitation efficacy of Low-Load blood flow restriction training for lateral patellar compression syndrome.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41680895/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















