この記事の要点
- 日本語タイトル:大腿四頭筋腱を用いたACL再建後リハビリは標準化されているか?
- 英語タイトル:Substantial variability and inconsistent quality of publicly available rehabilitation protocols after quadriceps tendon anterior cruciate ligament reconstruction: A cross-sectional analysis of academic orthopaedic surgery programmes.
ここで取り上げるのは、膝の前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament:ACL、膝の中で太ももとすねの骨をつないでいる靱帯)の手術後リハビリに関する話題です。
とくに、大腿四頭筋腱(Quadriceps Tendon:大腿の前側にある大きな筋肉「大腿四頭筋」と膝のお皿をつないでいる腱)を使ってACLを再建したあとのリハビリについて、できるだけ専門用語をかみくだいてお話しします。
研究の背景・目的
ACL再建手術では、もともと多く使われてきた膝蓋腱(Patellar Tendon:膝のお皿からすねの骨につながる腱)やハムストリング腱(Hamstring Tendon:太ももの裏側の筋肉から続く腱)だけでなく、近年は大腿四頭筋腱(Quadriceps Tendon:太ももの前の筋肉から膝のお皿につながる腱)を自分の体から採って使う方法(自家移植)が増えています。
ところが、手術後のリハビリについては、大腿四頭筋腱専用のやり方ではなく、従来の膝蓋腱やハムストリング腱用のリハビリ計画(プロトコル)をそのまま流用していることが少なくありません。
大腿四頭筋腱は、膝を伸ばす仕組み(伸展機構)に直接かかわる組織なので、この腱を採取した影響をきちんと考えたリハビリの指針を整えることが課題になっており、この研究ではその実際の状況を調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
研究では、まずアメリカのERAS(Electronic Residency Application Service:電子レジデンシー申請サービス。研修医希望者が病院プログラムに応募するための公式システム)と、カナダのCaRMS(Canadian Resident Matching Service:カナダレジデントマッチングサービス。研修医と研修先をマッチングする公式機関)に登録されている整形外科の研修プログラムを対象にしました。
それらのプログラムが公開しているウェブサイトを系統的に検索し、「大腿四頭筋腱(Quadriceps Tendon)を使ったACL再建」に特化したリハビリのプロトコル、もしくはその中で大腿四頭筋腱について明確に言及しているリハビリプロトコルだけを抜き出して調査しました。
研究の結果
調査対象となった219の施設のうち、条件を満たす大腿四頭筋腱関連のリハビリプロトコルが見つかったのは16件だけでした。つまり、公開されている数自体が多くはありませんでした。
内容を比べると、
・装具(膝を固定・保護するための器具)で膝を固定すること
・手術後の早い時期から膝をしっかり伸ばせるようにしていくこと
・膝の曲がり(屈曲)を3〜4か月ほどかけて獲得していくこと
・筋力トレーニングやバランス訓練を手術後1〜3か月ごろから始めること
・スポーツ復帰のためのテストを手術後5〜9か月ごろから行い始めること
といった大まかな流れは、どの施設でもおおよそ共通していました。
一方で、具体的な運動の内容や回数・強度、次の段階に進むための基準など、細かい運動処方や評価の中身については、施設ごとにかなり違いがあることがわかりました。
結論:今回の研究でわかったこと
大腿四頭筋腱を用いたACL再建後のリハビリについて、インターネット上で公開されているプロトコルは、数も多くなく、内容にも大きなばらつきがある状況でした。
共通しているのは、「手術後早い段階で膝をしっかり伸ばせるようにすること」と、「時間をかけて段階的に筋力や動きを強くしていくこと」という大きな流れです。
そのうえで、大腿四頭筋腱という移植に使った腱の特徴や、患者さんそれぞれの年齢・体力・スポーツ歴などの要因に合わせて、リハビリの内容を柔軟に調整していくことがポイントになると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
大腿四頭筋腱を使ったACL再建後のリハビリは、全体の進め方の枠組みはある程度共通していますが、現時点では細かいところまで統一された「標準的なやり方」が十分に整っているとは言いにくい状況です。
そのため、公開されているリハビリプロトコルを「絶対的な正解」としてそのまま当てはめるのではなく、大腿四頭筋腱を採取したことによる膝を伸ばす機能への影響や、患者さん一人ひとりの生活背景・スポーツの種類・仕事の内容などを考え合わせて、主治医や理学療法士が個別に調整していくことが大切だと考えられます。
参考文献
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Substantial variability and inconsistent quality of publicly available rehabilitation protocols after quadriceps tendon anterior cruciate ligament reconstruction: A cross-sectional analysis of academic orthopaedic surgery programmes.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41695911/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















