この記事の要点
- 日本語タイトル:AI搭載ウェアラブルは障がい者のリハ成績とQOLを本当に改善するか?
- 英語タイトル:Support vector machine algorithm-based wearable device in sports rehabilitation training for people with disabilities.
ここで取り上げるのは、リハビリテーション(rehabilitation:けがや病気のあとに、体の機能を取り戻すための訓練)や整形外科の診療で、実際によく問題になるテーマです。
できるだけ専門用語をかみくだいて、日常の外来でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
障がいのある方では、関節の動く範囲(関節可動域)、歩く力、日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living=食事・着替え・トイレ・入浴などふだんの生活動作)、生活の質(QOL:Quality of Life=生活の満足度や心身の状態)が下がりやすいことが大きな問題になっています。
従来のリハビリでは、続けることがむずかしい方が少なくなく、また「どれくらい良くなっているか」を客観的な数字としてフィードバックしにくい、という点が課題として指摘されてきました。
この研究では、そうした課題に対して、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を使ったウェアラブル機器を組み合わせることで、リハビリの効果や生活の質がどの程度変わるのかを調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
中国の南昌市に住む障がいのある方159名を対象にしました。
参加者を、従来どおりのリハビリだけを行うグループと、従来のリハビリにAI搭載ウェアラブル機器を追加して行うグループの2つに分けました。
ここでいうAIは、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:機械学習の一種で、データからパターンを学習して分類や予測を行うアルゴリズム)という方法を使ったものです。
両グループで、体の機能やQOL、ADLに加えて、運動学指標(体の動き方を数値で表したもの)、体幹アライメント(体幹:頭・胸・おなか・骨盤などの中心部分の姿勢の整い具合)、トレーニング指標(どれくらいトレーニングを行えたかなど)を比較して検証しました。
研究の結果
AI搭載ウェアラブル機器を併用したグループでは、従来のリハビリだけのグループと比べて、体の機能、QOL、ADLがより大きく改善していました。
また、関節可動域(ROM:Range of Motion=関節がどこまで曲がる・伸びるかの範囲)、歩行の状態、体幹アライメント(姿勢の整い具合)も、AIウェアラブル併用グループのほうがより良くなっていました。
さらに、トレーニングをどれくらい続けられたかという継続率や、リハビリ全体に対する満足度も、AIウェアラブルを使ったグループのほうが高い値を示していました。
結論:今回の研究でわかったこと
サポートベクターマシン(Support Vector Machine)というAIを搭載したウェアラブル機器を、従来のリハビリに追加すると、体の機能、QOL、ADLに加えて、関節可動域(ROM)や歩行の状態が統計学的に有意なレベルで改善していました。
また、リハビリを続けられる割合(継続率)や、患者さん自身の満足度も高まる可能性が示されています。
この研究は、AI搭載ウェアラブルをリハビリに組み合わせることが、障がいのある方のリハビリ成績や生活の質の向上に役立つ可能性を示したものといえます。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療の場では、AI搭載ウェアラブル機器を、あくまで従来のリハビリに「補助的に」組み合わせて使う、という考え方が現実的と考えられます。
こうした機器を使うことで、関節の動きや歩き方、姿勢(体幹アライメント)などの機能指標を数値としてとらえやすくなり、リハビリの継続率も含めて、より定量的に高めていく戦略が有用と考えられます。
ただし、すべての方に同じように当てはまるとは限らないため、実際に導入するかどうかは、患者さん一人ひとりの状態や希望をふまえて、主治医やリハビリスタッフと相談しながら決めていくことが大切です。
参考文献
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Support vector machine algorithm-based wearable device in sports rehabilitation training for people with disabilities.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41699067/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















