カンボジア小児下肢大欠損児はどのような背景で義足に至るか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:カンボジア小児下肢大欠損児はどのような背景で義足に至るか?
  • 英語タイトル:Pediatric major lower limb absence: demographics of children accessing 3 prosthetic rehabilitation centers in Cambodia.

ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科で、子どもの診療をしているとよく出てくる話題です。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、日常の外来でお話しするような言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「小児下肢大欠損」とは、子どもの足(下肢)の大きな部分が、生まれつきない、あるいは病気やけがで失われている状態を指します。
足は、立つ・歩く・走る・遊ぶといった動きに深く関わるため、こうした欠損は、子どもの成長や学校生活、将来の仕事や社会参加に、長い期間にわたって影響を及ぼす可能性があります。

世界の中でも、カンボジアのような「低中所得国(low- and middle-income countries:国全体としての収入水準が高くない国々)」では、
・なぜ足を失うことになったのかという原因
・いつ頃、どのタイミングで義足(人工の足)にたどり着いているのか
といった実際のデータが、あまり集まっていません。

そこでこの研究では、カンボジアで義足を使っている子どもたちが、どのような背景を持ち、どのような経過で義足に至っているのか、全体像を把握することを目的としました。

調査の方法(対象など)

この研究では、カンボジア国内にある義肢リハビリテーション施設(義足や義手を作り、リハビリを行う専門施設)3カ所を受診した子どもたちを対象にしました。
対象は、5〜17歳の子どもで、「足関節より中枢側の下肢大欠損」がある71人です。
ここでいう「足関節より中枢側」とは、足首より体の中心側、つまりすね(下腿)や太もも(大腿)など、より上の部分で大きな欠損がある状態を指します。

すでに施設を受診していた子どもたちの記録をさかのぼって調べる「後ろ向き解析(retrospective study:過去の診療記録を用いて行う研究)」という方法で、次のような項目を調べました。
・性別(男児か女児か)
・原因(生まれつきか、けがや病気によるものか、など)
・義足の種類(どの高さで切断され、どの部位の義足か)
・初めて義足を利用できた時期(何歳ごろに義足にアクセスできたか)

これらの情報を、「記述統計(descriptive statistics:人数や割合などを整理して全体像を示す方法)」と「推測統計(inferential statistics:グループ間の違いに意味のある差があるかどうかを統計的に検討する方法)」を使って分析しました。

研究の結果

調べた71人のうち、約3分の2が男の子でした。
使われていた義足のうち、約半数は「下腿義足(transtibial amputation:すねの骨である脛骨のあたりで切断された場合に使う義足)」でした。

足を失った原因としては、約6割が「外傷性(traumatic:けがによるもの)」で、その外傷性のうち7割以上が「交通事故」によるものでした。

また、
・原因(外傷か、先天性かなど)と性別
・原因と義足の種類(どの高さの義足か)
・原因と初めて義足を利用できた時期
の間には、「統計的に有意な関連(statistically significant association:偶然だけでは説明しにくい関連があると判断される状態)」があると判断されました。

結論:今回の研究でわかったこと

カンボジアの子どもの下肢大欠損では、原因として「外傷性(けがによるもの)」が多い傾向があり、その中でも男の子と、「大腿義足(transfemoral amputation:太ももの骨である大腿骨のあたりで切断された場合に使う義足)」の子が目立つ結果でした。

一方で、「先天性欠損(congenital limb deficiency:生まれつき足の一部または全部が欠けている状態)」の子どもでは、初めて義足にたどり着く時期が遅くなりやすい傾向がみられました。
そのため、この研究では、先天性欠損の子どもに対しては、早い段階からの評価と、成長に合わせて長く見守っていくフォロー体制を整えることが重要だと考えられました。

実際の診察ではどう考えるか

この研究では、けがによる切断の中でも、交通事故が原因となっているケースが多くみられました。
そのため、日常診療の場では、子どもの交通外傷を予防する取り組み(交通安全教育や環境整備など)とともに、けがをしてしまった場合でも、できるだけ高い位置での切断(高位切断)を避けるための外科的な方針を考えることが大切だと示唆されます。

また、生まれつき足の欠損がある子どもについては、早い時期から義足が必要かどうかを評価し、必要に応じて義足を導入し、その後も成長に合わせて継続的にフォローしていく体制を、医療やリハビリの現場に組み込んでいく必要があると考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

Yoリハビリ整形外科

名古屋市昭和区・かわな公園前

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