この記事の要点
- 日本語タイトル:軽度運動器疾患の救急外来、理学療法士初期対応はコスト増となるか?
- 英語タイトル:Primary contact physiotherapy versus standard emergency physician care in the emergency department: a Time-Driven Activity-Based Costing analysis.
ここでは、ねんざや軽い腰痛などの「軽いケガ・関節や筋肉の痛み」の患者さんを、救急外来でどのように診るかというお話を取り上げます。
ふだん整形外科やリハビリテーション科で行っている診療に近い内容ですが、できるだけ専門用語をかみくだいて説明していきます。
研究の背景・目的
「運動器疾患」とは、骨・関節・筋肉・靱帯(じんたい)など、体を動かすための器官に起こる病気やケガのことを指します。
その中でも、骨折や大きなケガではない「軽い運動器のトラブル」の患者さんが救急外来に多く来院すると、待ち時間が長くなったり、救急の医師の負担が増えたり、医療費がかさむ一因になると考えられています。
そこでこの研究では、「理学療法士(Physical Therapist、リハビリの専門職)が救急外来で最初の診察や評価を担当する形にすると、1人あたりの医療費がどう変わるのか」を調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は、カナダの都市部にある救急外来で行われました。
対象は、骨折などの重症ではない「軽度の運動器疾患」の患者さん78人です。
この患者さんたちを、次の3つの診療パターンに分けて、1回の受診にかかるコスト(費用)を比べました。
1つ目は、ふだん通り救急の医師が中心になって診る「救急医主導」のパターン。
2つ目は、理学療法士(Physical Therapist、運動機能の評価やリハビリの専門家)と救急医が一緒に診る「共同管理」のパターン。
3つ目は、理学療法士が救急外来で最初から最後まで診療を担当する「理学療法士単独管理」のパターンです。
研究の結果
費用の計算には、Time-Driven Activity-Based Costing(タイム・ドリブン・アクティビティ・ベースド・コスティング、時間駆動型作業原価計算)という方法が使われました。
これは、診察や検査などのそれぞれの作業に「どれくらい時間がかかり、その時間にどれくらいのコストがかかるか」を積み上げて、全体の費用を見積もる計算方法です。
この方法で計算したところ、理学療法士が関わる2つのパターン(共同管理と理学療法士単独管理)は、救急医だけが診る場合と比べて、平均的なコストに統計学的に明らかな差はみられませんでした。
その中でも、理学療法士が単独で診るパターンは、ほかのパターンよりもやや費用が低くなる傾向があるという結果でした。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究から、軽い運動器のトラブルの患者さんについては、救急外来の診療チームに理学療法士を加えても、1人あたりの医療費は、救急医だけが診る場合とおおむね同じくらいにおさまる可能性が示されました。
さらに、理学療法士が単独で診療を担当する形にすると、費用を少し抑えられる可能性もある、という結果になっています。
実際の診察ではどう考えるか
軽い運動器のトラブルの患者さんに対して、救急外来の「最前線」に理学療法士を配置して診療にあたっても、費用面での増加は大きくないと考えられます。
そのため、救急外来の混雑をやわらげたり、救急の医師の負担を軽くしたりすることをねらって、理学療法士を含めたチーム体制を検討する際の、1つの選択肢になりうると考えられます。
参考文献
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Primary contact physiotherapy versus standard emergency physician care in the emergency department: a Time-Driven Activity-Based Costing analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41708955/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















