この記事の要点
- 日本語タイトル:人工股関節全置換術後PEMF追加で痛みとQOLは改善するか?
- 英語タイトル:Pulsed electromagnetic field therapy versus sham therapy as an adjunct to conventional physiotherapy on pain, functional disability, and quality of life in patients undergoing total hip arthroplasty: a randomized placebo controlled trial protocol.
ここで取り上げる内容は、人工股関節の手術後のリハビリテーションや、整形外科の外来でよく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:股関節を人工の関節に入れ替える手術)のあとには、しばらく痛みが続いたり、関節が動かしにくくなったりして、日常生活の質(Quality of Life:QOL、生活のしやすさや満足度)が下がることがよくあります。
そこで、PEMF(Pulsed Electromagnetic Field:パルス電磁場療法)という、体を切ったり刺したりしない非侵襲的な治療法が、痛みや動きやすさ、QOLの改善に役立つのかどうかが注目されています。
ただし、このPEMFの効果については、現時点でははっきりした結論が出ていません。この研究は、その有効性をきちんと確かめることを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究では、人工股関節全置換術を受けた患者さん90人を対象にしています。
「単盲検ランダム化試験」という方法をとっており、これは、患者さんをくじ引きのような方法(ランダム化)で2つのグループに分け、どちらの治療を受けているかを患者さん側には知らせない(単盲検)というやり方です。
1つのグループはPEMF(Pulsed Electromagnetic Field:パルス電磁場療法)を受けるグループ、もう1つは見た目は同じですが実際には効果のない「シャム(偽)治療」を受けるグループです。どちらのグループも、通常行われる理学療法(Conventional Physiotherapy:関節を動かしたり筋力をつけたりするリハビリ)は同じように行います。
この2つのグループに2週間治療を行い、その前後で、
・VAS(Visual Analog Scale:痛みを0〜10などのスケールで自己評価する方法)
・HHS(Harris Hip Score:股関節の痛みや動き、歩きやすさなどを点数化した評価法)
・SF-36(Short Form-36:体の状態や気分など、健康関連QOLを36項目で評価する質問票)
といった指標を使って、痛みや機能、QOLの変化を比べる計画です。
研究の結果
この論文は、まだ「プロトコール」といって、研究の計画をまとめた段階の報告であり、実際の結果はまだ出ていません。
今後、PEMF(Pulsed Electromagnetic Field:パルス電磁場療法)を通常のリハビリに追加したグループと、シャム(偽)治療を追加したグループとで、2週間後までに
・VAS(痛みの自己評価)
・HHS(股関節の機能評価)
・SF-36(健康関連QOLの評価)
の数値がどのくらい違ってくるのかを、具体的に検証していく予定です。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、人工股関節全置換術後のリハビリテーションにPEMF(パルス電磁場療法)を追加することで、痛みや股関節の動き、QOLが早い段階でどの程度よくなるのかを、きちんと調べる計画が示されています。
まだ結果は出ていませんが、今後の結果によっては、PEMFが通常のリハビリに「補完療法」としてどのような位置づけになるかが変わってくる可能性があります。
実際の診察ではどう考えるか
PEMF(パルス電磁場療法)は、比較的短い時間で行える、追加の治療法の候補のひとつと考えられています。
ただし、現時点では効果がはっきり証明されているわけではないため、人工股関節全置換術後の治療の基本は、あくまで標準的な理学療法(関節を動かす練習や筋力トレーニングなど)になります。
今後、このような臨床試験の結果が出てきた段階で、PEMFを実際の診療に取り入れるかどうかを慎重に検討していく姿勢が大切と考えられます。
参考文献
-
Pulsed electromagnetic field therapy versus sham therapy as an adjunct to conventional physiotherapy on pain, functional disability, and quality of life in patients undergoing total hip arthroplasty: a randomized placebo controlled trial protocol.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41721418/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















