地域の社会的脆弱性は整形外科リハ成否に影響するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:地域の社会的脆弱性は整形外科リハ成否に影響するか?
  • 英語タイトル:The impact of social vulnerability on rehabilitation success: A retrospective study of outpatient orthopedic physical therapy.

ここで取り上げる内容は、整形外科のリハビリテーション(Rehabilitation、機能回復のための訓練)を日常診療で行うときに、実際によく関わってくるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、普段の外来でお話しするような言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

運動器リハビリテーション(Musculoskeletal Rehabilitation、骨・関節・筋肉などの運動器の機能回復を目指すリハビリ)の結果は、患者さんご本人の年齢や病気の状態といった「個人の要因」だけでなく、住んでいる地域の状況など「地域の要因」からも影響を受ける可能性があると考えられています。
この研究では、貧困の程度や交通手段の有無、住環境などをまとめて数値化した Social Vulnerability Index(ソーシャル・ヴァルネラビリティ・インデックス、社会的脆弱性指標)という指標と、外来で行う整形外科リハビリテーションの成績との関係があるかどうかを調べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

アメリカの公的病院で、外来の理学療法(Physical Therapy、運動や手技などを用いたリハビリ)を受けた整形外科の患者さん748人を対象に、過去の記録をさかのぼって調べる「後ろ向き解析」という方法で検討しました。
患者さんが住んでいる地域を、郵便番号(ZIPコード)ごとに区切って、その地域ごとの Social Vulnerability Index(社会的脆弱性指標)を用いました。
リハビリの成果については、FOTO(Focus on Therapeutic Outcomes、リハビリ治療の結果を数値で評価する指標)という評価方法を使って「成功したかどうか」を判定し、この成功の有無と通院回数が、Social Vulnerability Index とどのように関係しているかを調べました。

研究の結果

すべての患者さんをまとめて解析したところでは、Social Vulnerability Index(社会的脆弱性指標)の値とリハビリの「成功」とのあいだに、統計学的に意味のある(有意な)関係は確認されませんでした。
一方で、肩の病気・けが(肩疾患)の患者さんだけに絞ってみると、Social Vulnerability Index の値が高い、つまり社会的に不利な条件が多い地域ほど、リハビリがうまくいく「オッズ(Odds、成功する確率の比)」が低くなる傾向がみられました。
また、Social Vulnerability Index が高い地域ほど通院回数が少ない傾向があり、受診回数が1回増えるごとに、リハビリ成功のオッズが9%高くなるという関係も確認されました。

結論:今回の研究でわかったこと

全体の患者さんをまとめてみると、Social Vulnerability Index(社会的脆弱性指標)の値とリハビリ成績とのあいだには、はっきりした関連は見られませんでした。
ただし、肩の病気・けがの患者さんに限ってみると、Social Vulnerability Index が高い地域、つまり社会的に不利な条件が多い地域ほど、リハビリが成功するオッズが低くなっており、さらにそのような地域では通院回数が少ないことも関係している可能性が示されました。

実際の診察ではどう考えるか

社会的に不利な条件が多い地域にお住まいの、肩の病気・けがの患者さんでは、仕事や家族の事情、交通手段などの影響で、リハビリに通い続けることが難しくなる場合があると想定しておく必要があると考えられます。
そのため、初診の段階から、通院の頻度をどう確保するか、途中で通えなくなってしまう「ドロップアウト(途中離脱)」をどう防ぐかといった工夫を、リハビリ計画の中にあらかじめ組み込んでおくことが役立つ可能性があると考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科 院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

Yoリハビリ整形外科

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