この記事の要点
- 日本語タイトル:ACL再建と膝OAリハでRPEはどう報告されているか?
- 英語タイトル:How is the rating of perceived effort reported in anterior cruciate ligament and knee osteoarthritis rehabilitation studies? A scoping review.
ここで扱う内容は、リハビリテーションや整形外科の外来でよく出てくる話題です。
専門用語も出てきますが、「なぜそれが大事なのか」が伝わるように、できるだけ日常の言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
「ACL再建」とは、膝の中にある前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい:Anterior Cruciate Ligament)の手術で靱帯を作り直す治療のことです。
「膝OA」は、膝の変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう:Knee Osteoarthritis)のことで、膝の軟骨がすり減って痛みや動かしにくさが出る病気です。
これらの病気で行う筋力トレーニングでは、「RPE(Rating of Perceived Exertion:自覚的運動強度/自分で感じるきつさの目安)」という、運動のつらさを数字で表す方法が広く使われています。
ただし、このRPEの使い方や、論文の中での報告の仕方が研究ごとにばらばらで、研究どうしを比べにくく、日常診療にも十分に生かしにくい状況があることが、この研究の出発点になっています。
調査の方法(対象など)
医学論文を集めるためのデータベースとして、PubMed(パブメド:医学論文検索サイト)など六つのデータベースを使いました。
そこで、ACL再建後の方と膝OA(変形性膝関節症)の成人の方を対象にした、下肢(脚)のレジスタンストレーニング(抵抗をかけて行う筋力トレーニング)の研究を集めました。
そのうえで、それぞれの研究でRPE(自覚的運動強度)がどのように使われ、どのような内容が報告されているかを、決まった手順に沿って整理しました。
研究の結果
多くの研究では、「どの種類のRPEスケール(例:0〜10の数字で表すなど)を使ったか」や、「どのくらいの運動強度でトレーニングしたか」といった点は、比較的よく書かれていました。
一方で、患者さんにスケールの使い方に慣れてもらうための手順(慣れ手順)、数字の意味を具体例で示して基準をそろえる作業(アンカリング:たとえば『10は全力疾走のようなきつさ』などと決めておくこと)、患者さんへの説明内容、「膝だけのきつさなのか、全身のきつさなのか」といった評価の範囲、そして「運動の前・最中・後のどのタイミングでRPEを記録したか」といった情報は、全体の二割未満の研究でしか報告されておらず、大きく不足していました。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の調査では、RPE(自覚的運動強度)について、「どのスケールを使ったか」や「運動の強さ」は多くの研究でしっかり書かれていました。
一方で、患者さんにスケールに慣れてもらう方法や、アンカリング(数字の意味を具体的にそろえること)など、本来はRPEを正しく使ううえで大切と考えられる部分があまり書かれていませんでした。
そのため、RPEの結果の「妥当性(その数字が本当に意味のある値かどうか)」や「再現性(別の人や別の場所で同じように測ったときに、同じような結果が出るかどうか)」が十分でない可能性があると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
日常の診察やリハビリの場面では、まずどのRPEスケール(自覚的運動強度の数字の表し方)を使うかを決めておき、その説明の仕方やアンカリング(「この数字はこのくらいのきつさ」と具体的に決めておくこと)、そして「いつRPEを記録するか(運動前・途中・後など)」をあらかじめ標準的な形にそろえておくことが大切と考えられます。
そのうえで、その決めた方法に従って、カルテや研究ノートに同じ形式で記録していくことで、患者さんの経過を追いやすくし、研究結果とも比較しやすくなると考えられます。
参考文献
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How is the rating of perceived effort reported in anterior cruciate ligament and knee osteoarthritis rehabilitation studies? A scoping review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41742778/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















