この記事の要点
- 日本語タイトル:人工股関節・膝関節置換術前のPT+自宅評価は術後成績を改善するか?
- 英語タイトル:The value of a preoperative physical therapy and home evaluation program in total joint arthroplasty.
ここでは、人工の関節に入れ替える手術の前に行うリハビリや、自宅の環境をあらかじめ確認しておくことが、本当に手術後の経過に役立つのかをまとめています。
ふだん整形外科やリハビリテーション科でよく話題になる内容ですが、専門用語はできるだけかみくだいて説明していきます。
研究の背景・目的
TJA(Total Joint Arthroplasty、人工関節全置換術)は、すり減った関節を人工の関節に入れ替える手術の総称で、高齢の方を中心に受ける人が増えています。
手術を待っているあいだに、痛みなどの影響で筋力が落ちたり、ADL(Activities of Daily Living、食事・着替え・トイレ・歩行などの日常生活動作)の能力が下がってしまうことが問題になることがあります。
そこで、術前プレハビリ(Prehabilitation、手術の前から行う筋力トレーニングや動きの練習などの強化プログラム)を行うと、痛みがやわらいだり、手術に対する満足度が高くなる可能性があると考えられていますが、その効果について調べた研究です。
調査の方法(対象など)
この研究では、一次TJA(Primary Total Joint Arthroplasty、初めて受ける人工関節全置換術)の患者さん254例を対象に、過去の記録をさかのぼって調べる「後ろ向き研究」という方法で検討しています。
そのうち67例は、術前プレハビリとしてPT(Physical Therapy、理学療法:理学療法士による運動や歩行練習などのリハビリ)と、自宅の段差や手すりの有無などを確認する自宅安全評価を受けていました。
これらの患者さんについて、手術前後の疼痛(Pain、痛みの程度)、モビリティ(Mobility、立ち上がりや歩行などの動きやすさ)、可動域(Range of Motion、関節がどこまで曲がる・伸びるかの範囲)、オピオイド使用量(Opioid、モルヒネなどの強い鎮痛薬をどれくらい使ったか)を比較しました。
研究の結果
THA(Total Hip Arthroplasty、人工股関節全置換術)を受けた患者さんでは、術前にプレハビリを行っていたグループで、手術後まもない時期のモビリティ(動きやすさ)と、手術から3か月後の股関節のROM(Range of Motion、可動域)が良い傾向がみられました。
TKA(Total Knee Arthroplasty、人工膝関節全置換術)を受けた患者さんでは、外来通院中に必要になったオピオイド(強い痛み止めの薬)の使用量が少ない傾向がみられました。
結論:今回の研究でわかったこと
TJA(人工関節全置換術)の前に行うプレハビリ(理学療法と自宅環境の評価を組み合わせたプログラム)は、THA(人工股関節全置換術)では関節の可動域と手術後早い時期の動きやすさを、TKA(人工膝関節全置換術)ではオピオイド(強い鎮痛薬)の使用量を、それぞれ改善しうる一つの方法と考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
TJA(人工関節全置換術)を予定している患者さんには、手術前の段階からPT(理学療法)と自宅評価を組み合わせたプレハビリを提案し、手術後の痛みのコントロールや、関節の動きやすさ・生活のしやすさの質を少しでも高めるための一つの選択肢として活用していきます。
参考文献
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The value of a preoperative physical therapy and home evaluation program in total joint arthroplasty.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41746365/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















