この記事の要点
- 日本語タイトル:HIP ATTACK導入で大腿骨近位部骨折の手術とPT評価は本当に早まるか?
- 英語タイトル:Implementation of the HIP ATTACK Protocol Significantly Decreased Time to Surgery and Physical Therapy Evaluation for Hip Fracture Patients.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の診療でよく問題になるテーマです。
専門的な話も出てきますが、できるだけ日常の外来でお話しするような、わかりやすい言葉で説明していきます。
研究の背景・目的
【背景】高齢の方が「大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ:太ももの付け根の骨折)」を起こした場合、手術が遅れたり、ベッドから起き上がる時期が遅れたりすると、「肺炎」や「DVT(Deep Vein Thrombosis:ディープ・ベイン・スロンボーシス、深部静脈血栓症といい、足の深いところの静脈に血のかたまりができる病気)」が起こりやすくなることが知られています。さらに、ADL(日常生活動作:食事・トイレ・歩行などふだんの生活動作)の低下や、死亡率が高くなることとも関連するとされています。そのため、多くの病院では、できるだけ早く手術を行い、早めにリハビリテーション(リハビリ)を始めることがよいと考えられ、推奨されています。
調査の方法(対象など)
【対象と方法】1つの大学病院(単一アカデミックセンター)で、2011年から2021年のあいだに「大腿骨近位部骨折」の手術を受けた50歳以上の患者さん781人を対象に、過去の記録をさかのぼって調べる「後ろ向き解析」という方法で検討しました。2016年9月に「HIP ATTACK(ヒップ・アタック)プロトコル」という院内の標準的な流れを導入する前と後で、「骨折と診断されてから手術までの時間」「手術が終わってからPT(Physical Therapy:フィジカル・セラピー、理学療法士によるリハビリ評価)を受けるまでの時間」「実際に動き始める(動員開始)までの時間」を比較しました。
研究の結果
【結果】骨折と診断されてから手術までの時間は、導入前は平均30時間だったのが22時間になり、はっきりと短くなっていました。また、手術が終わってから理学療法士による評価(PT評価)までの時間も、30時間から27時間へと有意に短くなっていました。一方で、手術後に立ち上がりを始めるまでの時間は、59時間から58時間と、ほとんど変わっていませんでした。このことから、ベッドサイドでの実際の運用の仕方や、患者さんごとの体調・合併症など、別のところに「ボトルネック(流れを妨げている要因)」がある可能性が示唆されました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、「HIP ATTACKプロトコル」という標準的な流れを導入することで、「診断から手術まで」と「手術から理学療法士による評価(PT評価)まで」の時間を短くすることは達成されていました。一方で、「手術後に立ち上がりを始める時期」については変わらなかったため、病院全体として、どの場面で時間がかかっているのかを意識しながら、運用の仕方を見直していく必要があることが示唆されました。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診療では、このような標準化されたプロトコルを使って、「手術までの時間」と「理学療法士による評価(PT評価)までの時間」をできるだけ短くすることを目指します。そのうえで、病棟での看護体制や、夜間・休日の対応の仕方など、患者さんがベッドから起き上がる場面での「ボトルネック」になりやすい部分も同時に見直していくことが必要と考えられます。
参考文献
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Implementation of the HIP ATTACK Protocol Significantly Decreased Time to Surgery and Physical Therapy Evaluation for Hip Fracture Patients.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41757914/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















