この記事の要点
- 日本語タイトル:肩鎖関節脱臼はいつ手術し、いつ保存とするか?
- 英語タイトル:Comprehensive review of acromioclavicular joint dislocation: anatomy, mechanism, imaging, treatment and rehabilitation-narrative review.
このテーマは、リハビリテーション(Rehabilitation:けがや病気のあとに、運動機能や日常生活動作を取り戻すための訓練)や整形外科(Orthopedics:骨・関節・筋肉・靱帯など運動器の病気やけがを扱う診療科)の外来で、よく問題になる内容です。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけ日常のことばに置きかえながら説明していきます。
研究の背景・目的
肩鎖関節脱臼(Acromioclavicular joint dislocation:肩の先端にある「肩峰」と、鎖骨がつながる関節が外れてしまうけが)は、肩のけが全体の約9%を占めるとされています。ラグビーやサッカーなど、体と体がぶつかるコンタクトスポーツで起こりやすい外傷です。
治療としては、手術をしないで安静やリハビリで治す保存療法(Conservative treatment)と、手術療法(Surgical treatment)のどちらを選ぶかが、日常診療の中で大きな検討ポイントになっています。
調査の方法(対象など)
この研究は、肩鎖関節脱臼に関するこれまでの医学論文を集めて整理した「ナラティブレビュー(Narrative review:研究結果をまとめて、全体像をわかりやすく整理する総説)」という形式の研究です。
肩鎖関節の解剖(Anatomy:骨や靱帯などの構造)、受傷機転(Mechanism of injury:どのような転び方・ぶつかり方で起こるか)、画像評価(Imaging:レントゲンやCT、MRIなどでの写り方)、治療戦略(Treatment strategy:保存療法と手術療法の選び方)、リハビリテーション(Rehabilitation:治療後の機能回復の進め方)といった、それぞれの観点から、これまでの知見を整理した内容になっています。
研究の結果
肩鎖関節脱臼の重症度は、一般的にRockwood分類(Rockwood classification:Ⅰ〜Ⅵ型まで、ずれの程度や方向で分ける国際的な分類)という方法で分けられます。
Ⅰ〜Ⅱ型の比較的軽い肩鎖関節脱臼では、保存療法で機能(肩の動きや力)が良好に回復することが多いとされています。
Ⅲ型では、保存療法と手術療法を比べても、長い目で見たときの成績に大きな差はないと報告されています。
Ⅳ〜Ⅵ型のような、ずれが大きい重症例では、骨や靱帯の変位(本来の位置からのずれ)や合併症(Complications:神経・血管の障害など、追加で起こりうる問題)のリスクを考えて、手術療法を選ぶことが一般的とされています。
結論:今回の研究でわかったこと
肩鎖関節脱臼では、Rockwood分類でⅠ〜Ⅱ型の症例と、多くのⅢ型の症例では、手術を行わない保存療法が妥当と考えられています。
一方で、Ⅳ〜Ⅵ型のような重度の脱臼や、競技レベルのスポーツ復帰を強く希望される方などでは、手術療法を選択肢として検討する方針が有用であるとまとめられています。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診察では、まずRockwood分類(Ⅰ〜Ⅵ型のどのタイプか)と、レントゲンなどの画像所見(Imaging findings:骨のずれ方や関節の状態)を確認します。
そのうえで、患者さんの競技レベル(趣味のスポーツか、プロ・ハイレベル競技か)、職業(腕をよく使う仕事かどうか)などの背景を組み合わせて、保存療法と手術療法のどちらが適しているかを一緒に考えていきます。
どちらの治療法を選んだ場合でも、痛みの状態やけがの程度に合わせて、できる範囲から早期に計画的なリハビリテーションを始めることが、肩の機能回復にとって大切とされています。
参考文献
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Comprehensive review of acromioclavicular joint dislocation: anatomy, mechanism, imaging, treatment and rehabilitation-narrative review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41761265/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


















