この記事の要点
- 日本語タイトル:手腱手術後リハビリでMatrix Rhythm Therapyは通常物理療法より可動域と機能を改善できるか?
- 英語タイトル:Effect of Matrix Rhythm Therapy (MaRhyThe®) Versus Conventional Physiotherapy on Hand Mobility and Function in Individuals with Postoperative Hand Tendon Injuries: A Pilot Randomized Controlled Trial.
ここでは、手の腱(けん:筋肉と骨をつなぐ強いひも状の組織)の手術をしたあとのリハビリについてお話しします。
ふだんの整形外科やリハビリの診察でもよく出てくる内容なので、専門用語はできるだけかみくだいて説明していきます。
研究の背景・目的
手の「屈筋腱(くっきんけん:指を曲げるときに働く腱)」や「伸筋腱(しんきんけん:指を伸ばすときに働く腱)」の手術をしたあとには、
関節が固くなる「関節拘縮(かんせつこうしゅく)」や、動かせる角度がせまくなる「可動域制限(かどういきせいげん)」、
ボタンをとめる・字を書くなどの細かい動き「巧緻動作(こうちどうさ)」がやりにくくなることが問題になります。
これまでは、主に「超音波(ちょうおんぱ)治療:音の振動を利用した物理療法(ぶつりりょうほう)」がよく使われてきましたが、
どの治療方法が、関節の動く範囲(ROM:Range of Motion、関節可動域)や手の機能を一番よく改善できるのかは、はっきりわかっていませんでした。
そこで、この研究では「Matrix Rhythm Therapy(マトリックス・リズム・セラピー、略称MaRhyThe®:筋肉や周囲の組織に振動を与える治療法)」が、
従来の物理療法と比べて、手術後の手の可動域や機能をどの程度よくできるのかを調べることを目的としました。
調査の方法(対象など)
手の腱の手術を受けた患者さん20人を対象にして、「ランダム化(らんだむか:くじ引きのように無作為に分ける方法)」で2つのグループに分けました。
どちらのグループも、2週間のあいだに合計4回の治療を受けました。
MaRhyThe®のグループは、1回あたり60分間のMatrix Rhythm Therapyを受けました。
もう一方の対照群(たいしょうぐん:比較のためのグループ)は、1回あたり5分間の超音波治療と、自宅で行う運動療法の指導を受けました。
そして、治療を始める前と終わったあとで、関節の可動域(ROM)、手の機能、痛みの強さを比べました。
研究の結果
MaRhyThe®を受けたグループでは、手首を曲げる動き(手関節屈曲)の可動域が、平均して約20度広がりました。
また、「ARAT(Action Research Arm Test:上肢機能検査。腕や手の動きの細かさや器用さを点数化するテスト)」の点数が、約15点上がりました。
さらに、「NPRS(Numerical Pain Rating Scale:数値疼痛尺度。0〜10などの数字で痛みの強さを自己申告する方法)」のスコアが、
平均して約3ポイント下がり、痛みが軽くなったことが示されました。
結論:今回の研究でわかったこと
この研究では、MaRhyThe®を行ったグループのほうが、手の腱の手術後に、
関節の動く範囲(可動域)や手の機能、痛みの面で、通常行われている超音波治療よりも大きく改善している可能性が示されました。
そのため、手術後の早い時期から中くらいの時期までのリハビリにおいて、
MaRhyThe®が、従来の治療に加えて使える選択肢のひとつになりうることが示唆されています。
実際の診察ではどう考えるか
MaRhyThe®は、比較的短い期間でも、関節の可動域や手の機能をよくできる可能性があると考えられます。
ただし、この研究は参加した人数が少ない「パイロット試験(予備的に行う小規模な研究)」で、
長い期間でみた効果や、腱が再び切れてしまう「再断裂(さいだんれつ)」のリスクについては、まだ十分に検証されていません。
今後、より多くの患者さんを対象にした研究で、長期的な結果や安全性を確かめていくことが課題とされています。
参考文献
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Effect of Matrix Rhythm Therapy (MaRhyThe®) Versus Conventional Physiotherapy on Hand Mobility and Function in Individuals with Postoperative Hand Tendon Injuries: A Pilot Randomized Controlled Trial.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41778910/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















