この記事の要点
- 日本語タイトル:戦傷兵のリハ効果評価にFIMは本当に有用か?
- 英語タイトル:Application of functional independence measure in the rehabilitation of military servicemen wounded during war operations in Ukraine.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション(Rehabilitation、けがや病気のあとに行う機能回復のための訓練)や整形外科の診療で、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつどかみくだいて説明していきますので、ゆっくり読んでいただければと思います。
研究の背景・目的
今の時代の戦争では、爆発によるけが(爆傷)で、体のいろいろな場所を同時に傷める「多発外傷」が増えているとされています。同じくらい重いけがでも、「手足が動かしにくいといった運動の障害が中心の人」と、「ものごとを覚えにくい・判断しにくいなどの認知機能の障害が中心の人」とでは、リハビリテーションの進め方が大きく変わってきます。
そのため、FIM(Functional Independence Measure、機能的自立度評価法)という検査を使って、どのくらい自分で生活動作ができるかを客観的な数値で評価することの必要性が高まっている、という背景があります。
調査の方法(対象など)
この研究では、ウクライナで戦闘によってけがをした軍人807名を対象にしています。すでに行われた診療の記録をさかのぼって調べる「後ろ向き研究」という方法で行われました。
けがの重さはAIS(Abbreviated Injury Scale、外傷の重症度を段階的に評価する国際的な指標)で軽度から中等度とされた人たちについて、カルテ(診療録)の内容や診察時の身体所見、そしてFIMスコアを解析しました。
入院したときと、リハビリテーションを行ったあとのFIMの変化を調べることで、運動機能(手足や体を動かす力や動作)と認知機能(理解・記憶・判断などの頭の働き)がどのように変わったかを数値として検討しています。
研究の結果
対象となったすべての人で、FIMの合計点(生活の自立度を表す総合点)が統計的に意味のある形で上がっていました。
また、最初のFIMの結果から、「運動の障害が目立つ人のグループ」と「認知機能の障害が目立つ人のグループ」に分かれる傾向がみられました。
TBI(Traumatic Brain Injury、外傷性脳損傷:頭を強く打つなどして脳にダメージを受けた状態)のある人たちのグループでは、主に認知機能に関するFIMの点数がよくなっていました。
一方で、上下肢複合外傷群(両腕・両脚など複数の手足にけがをしている人たちのグループ)では、入院時の運動FIMの点数が低い、つまり最初の運動機能の自立度が低い人ほど、その後の運動FIMの伸びが大きいという結果がみられました。
結論:今回の研究でわかったこと
戦争でけがをした兵士の機能を評価する際にFIM(機能的自立度評価法)を使うと、「運動の障害が中心なのか」「認知機能の障害が中心なのか」を数値として分けて考えることができる可能性が示されています。
その結果をもとに、一人ひとりの状態に合わせたリハビリテーションの計画を立てるうえで、FIMが役立つ可能性があると考えられています。
実際の診察ではどう考えるか
FIM(機能的自立度評価法)を、診療の場での標準的な評価方法として取り入れることで、戦争によるけがや、一般的な外傷の患者さんについて、「どの機能が一番のネック(ボトルネック)になっているか」を数値で把握しやすくなります。
そのうえで、筋力や関節の動きを中心に鍛える運動訓練と、認知機能や日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living、食事・着替え・トイレなど普段の生活に必要な動作)の訓練とのバランスをどう配分するかを考えるときに、FIMが実際的な指標として使える可能性があるとされています。
参考文献
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Application of functional independence measure in the rehabilitation of military servicemen wounded during war operations in Ukraine.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41796686/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















