ACL再建後の暗所リハは反対側損傷と再断裂を減らせるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:ACL再建後の暗所リハは反対側損傷と再断裂を減らせるか?
  • 英語タイトル:A rehabilitation programme performed in darkness after anterior cruciate ligament reconstruction reduces the risk of secondary injuries.

ここでは、膝の前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい:Anterior Cruciate Ligament/ACL)が切れて手術を受けたあと、どんなリハビリをすると再びケガをしにくくなるか、というお話をします。
ふだん整形外科やリハビリの外来でよく話題になる内容ですが、専門用語はできるだけかみくだいて説明していきます。

目次

研究の背景・目的

前十字靱帯(ACL)が切れて、再建手術(切れた靱帯の代わりに自分の腱を移植して作り直す手術)を受けたあとには、同じ側の膝でまたACLが切れてしまう「再断裂」だけでなく、反対側の膝のACLを新たに傷めてしまうことも少なくないとされています。
これまでのリハビリは、主に明るい部屋など、目で周りをよく見ながら行う環境が中心でした。
一方で、「固有感覚(こゆうかんかく:Proprioception)」という、目で見なくても自分の関節の位置や動きを感じ取る能力を高めることが、ケガの予防につながるのではないかと考えられています。
そこでこの研究では、あえて暗い環境で、目から入る情報を制限しながらリハビリを行うことで、この固有感覚をより鍛えることができ、その結果として、再断裂や反対側のACL損傷といった「二次的なケガ(二次損傷)」を減らせる可能性があるかどうかを調べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

この研究では、16歳以上で、前十字靱帯(ACL)を自分の腱(自家腱:じかけん)を使って再建する手術と、前外側靱帯(ぜんがいそくじんたい:膝の外側前方を支える靱帯)の再建手術を同時に受けた方を対象としました。
1つの医療機関で行われた「後ろ向きコホート研究(retrospective cohort study)」という方法で、すでに行われた治療や経過をさかのぼって調べるタイプの研究です。
手術後4か月以降に始まる「再アスリート化プログラム(スポーツ復帰に向けた本格的なトレーニング)」について、
・通常どおり明るい環境で行ったグループ(通常群)と、
・暗い環境でのトレーニングを一部取り入れたグループ(暗所併用群)
の2つを比較しました。

研究の結果

暗い環境でのトレーニングを取り入れた「暗所併用群」では、反対側の膝の前十字靱帯(ACL)が新たに切れてしまう割合が、通常のリハビリを行ったグループに比べて統計学的に有意に低い、つまり数字としてはっきり少ないという結果でした。
同じ側の膝のACLが再び切れてしまう「再断裂」の割合も、暗所併用群の方が低い傾向がみられましたが、この部分については「はっきり差がある」とまでは言い切れない結果でした。
膝の機能を評価する指標として、IKDC(International Knee Documentation Committee:国際膝関節文書委員会が作成した膝の機能評価スコア)などのスコアを比べると、両方のグループでほぼ同じ程度でした。
一方で、Tegner(テグナー活動スコア:どのくらい強度の高いスポーツや活動に復帰できているかを段階的に評価する指標)では、暗所併用群の方が、より高いレベルのスポーツに戻れている傾向がみられました。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究の結果から、前十字靱帯(ACL)再建手術のあと、スポーツ復帰に向けた「再アスリート化」の時期に、暗い環境でのトレーニングを一部取り入れることで、反対側の膝のACL損傷が少なくなる可能性が示されました。
また、Tegner活動スコアの結果から、スポーツへの復帰レベルが高くなる可能性も示されています。
ただし、あくまで「可能性がある」という段階であり、すべての方に同じ効果があると断定できるわけではない点には注意が必要です。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察やリハビリの場面では、競技やスポーツに復帰していく時期に、暗い部屋などでのバランス練習やアジリティトレーニング(素早い方向転換やステップワークの練習)を、全体の一部として取り入れる、という考え方が選択肢のひとつになりえます。
こうした暗所でのトレーニングによって、目からの情報に頼りすぎず、足や膝の位置を感じ取る「固有感覚」や、体の動きを自分でコントロールする力を鍛えることが、二次的なケガ(二次損傷)を予防する一助となる可能性があります。
ただし、実際に取り入れるかどうかは、膝の状態や競技レベル、施設の環境などによって変わりますので、主治医や理学療法士と相談しながら、無理のない範囲で進めていくことが大切です。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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