この記事の要点
- 日本語タイトル:AISに対するPSSE単独と併用療法はどちらが有利か?
- 英語タイトル:Superiority of combined physiotherapeutic scoliosis-specific exercises in spinal deformity and quality of life of adolescents with idiopathic scoliosis: A meta-analysis of randomized controlled trials.
このテーマは、リハビリテーション科や整形外科の外来で、思春期のお子さんを診るときによく出てくる話題です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。
研究の背景・目的
「AIS(Adolescent Idiopathic Scoliosis、思春期特発性側弯症)」は、主に成長期の子どもから思春期にかけてみられる背骨のゆがみ(脊柱変形)の病気です。原因がはっきりわからないタイプで、成長とともに背骨の曲がりが進んでしまうことがあります。
ゆがみが大きく進行すると、将来的に手術が必要と判断されることもあります。そこで、できるだけ手術を避けるために「保存療法(手術をしない治療)」が行われます。
その中でも「PSSE(Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercises、側弯症特異的運動療法)」という、側弯症のために考えられた特別な体操・リハビリが、保存療法の中心的な役割を担っているとされています。
この研究では、PSSEだけを行う場合と、PSSEに他の保存療法を組み合わせて行う場合とで、どちらがより背骨のゆがみや生活の質に良い影響があるかを調べることを目的としています。
調査の方法(対象など)
対象となったのは、AIS(思春期特発性側弯症)の患者さんを調べた研究です。
研究の形式は「RCT(Randomized Controlled Trial、無作為化比較試験)」といって、治療法をくじ引きのようにランダムに分けて比べる方法で、治療効果を調べるときによく使われる研究デザインです。
このRCTをまとめて解析する「メタ解析(複数の研究結果を統合して、全体としての傾向を調べる方法)」が行われ、PSSEだけを行った場合と、PSSEに他の保存療法を組み合わせた場合(PSSE併用療法)を比較しました。
主な評価項目(アウトカム)は次の3つです。
・「Cobb角(コブ角)」:レントゲンで背骨の曲がり具合を角度で測った数値で、側弯症の重症度を表す指標です。
・「ATR(Angle of Trunk Rotation、体幹回旋角)」:上半身のねじれ具合を角度で測る指標で、前かがみになったときの背中の左右差などを評価します。
・「SRS-22(Scoliosis Research Society-22 questionnaire、側弯症に関する質問票)」:痛み、見た目に対する満足度、日常生活のしやすさ、精神面などを患者さん自身に答えてもらうアンケートで、「QOL(Quality of Life、生活の質)」を評価するために使われます。
研究の結果
まず、PSSEだけを行った場合でも、Cobb角(背骨の曲がりの角度)、ATR(体幹のねじれの角度)、SRS-22(生活の質をみる質問票)のいずれも、統計的に意味のある改善がみられました。
さらに、PSSEに他の保存療法を組み合わせた「PSSE併用療法」では、PSSE単独の場合と比べて、Cobb角とATRがそれぞれ約0.7度、SRS-22が約0.2点だけ、追加で良くなるという結果が示されました。
ただし、この追加の改善の大きさ(効果量)は、数字としては小さい範囲にとどまると評価されています。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の研究から、PSSEだけでも、背骨の曲がりを表すCobb角や、生活の質(QOL)を改善する効果が期待できることが示されています。
そのうえで、PSSEに他の保存療法を組み合わせると、改善の程度は小さいものの、統計的には意味のある「上乗せ効果(追加の効果)」があるとされています。
実際の診察ではどう考えるか
診察の場面では、まずPSSE(側弯症特異的運動療法)を治療の基本として考えることになります。
そのうえで、背骨の曲がりが進行しやすいと考えられる「高リスク」の方や、「できるだけ手術を避けたい」という希望が強い方では、PSSEに他の保存療法を組み合わせるかどうかを検討することがあります。
その際には、患者さんやご家族と一緒に、追加の治療による負担(通院回数や時間、費用、生活への影響など)と、この研究で示された小さな上乗せ効果とを比べながら、併用療法を行うかどうかを相談していくことが大切と考えられます。
参考文献
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Superiority of combined physiotherapeutic scoliosis-specific exercises in spinal deformity and quality of life of adolescents with idiopathic scoliosis: A meta-analysis of randomized controlled trials.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41891125/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















