この記事の要点
- 日本語タイトル:慢性首肩痛や腰痛で運動だけは圧痛閾値を高めるか?
- 英語タイトル:Effects of exercise-induced hypoalgesia on pressure pain threshold in patients with chronic musculoskeletal pain: A systematic review and meta-analysis.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の外来で、慢性的な首や肩、腰の痛みを診るときによく関係してくるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけ日常の言葉に置きかえて、ゆっくり説明していきます。
研究の背景・目的
長く続く筋肉や関節などの痛み(慢性筋骨格系疼痛:まんせい きんこっかくけい とうつう)では、軽く押しただけでも痛みを感じやすくなることが多いとされています。
この「押したときに、どのくらいの強さから痛みを感じ始めるか」を数値で表したものが、圧痛閾値(Pressure Pain Threshold:プレッシャー ペイン スレッショルド)と呼ばれます。
また、運動をしたあとに一時的に痛みが軽くなる現象のことを、運動誘発性低痛覚(Exercise-induced hypoalgesia:エクササイズ インデュースド ハイポアルジージア)といい、最近注目されています。
この研究では、「運動だけを行った場合」と「運動に加えて、ほかの物理療法(例:手で行う治療や電気治療など)も一緒に行った場合」とで、圧痛閾値への影響にどのくらい違いがあるのかを整理して調べることを目的としました。
調査の方法(対象など)
対象となったのは、慢性的な筋肉や関節の痛み(慢性筋骨格系疼痛)を持つ患者さんを扱った研究です。
研究の形式はランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:ランダマイズド コントロールド トライアル)といって、治療方法をくじ引きのようにランダムに分けて比べる、信頼性が比較的高いとされる方法です。
ここでは、有酸素運動(Aerobic Exercise:エアロビック エクササイズ。ウォーキングや自転車こぎなど、ある程度長く続けられる運動)などの「運動療法だけ」を行ったグループと、徒手療法(Manual Therapy:マニュアル セラピー。関節や筋肉を手で動かしたりほぐしたりする治療)や電気治療(Electrical Stimulation:エレクトリカル スティムレーション)などを含めた治療グループを比較しました。
そして、「押してどのくらいの強さから痛みを感じ始めるか」を示す圧痛閾値(Pressure Pain Threshold:押して痛みを感じ始める強さ)を、いちばん大事な評価項目として調べました。
研究の結果
全部で19本のランダム化比較試験の結果をまとめて解析しました。
その結果、首や肩の痛み、そして慢性腰痛のどちらの場合でも、「運動だけ」の治療よりも、「運動に加えて、ほかの物理療法も一緒に行う治療」のほうが、圧痛閾値を少しだけ高める(=押したときに痛みを感じにくくする方向に働く)可能性があるとされました。
ただし、その差は小さく、どれくらい信頼してよい結果なのかを示すエビデンスの確実性(Evidence Certainty:えびでんすの かくじつせい)も高くはないと評価されています。
結論:今回の研究でわかったこと
慢性的な首や肩の痛み、腰痛の患者さんでは、「運動だけ」を行うよりも、「運動に加えて、ほかの物理療法も組み合わせる」ほうが、圧痛閾値をわずかに高める可能性があると示されました。
一方で、その効果の大きさはあくまで小さいとされており、研究結果の信頼性(エビデンスの確実性)も十分に高いとはいえないと報告されています。
実際の診察ではどう考えるか
慢性的な首や肩、腰の痛みがある場合、「痛いから運動はやめておこう」と完全に中止してしまうのではなく、運動は続けながら、徒手療法(手で行う治療)などのほかの物理療法や、痛みの仕組みについての説明・教育(Education:エデュケーション)も組み合わせていくことが一つの考え方になります。
このように、複数の方法を組み合わせて治療していくマルチモーダルな戦略(Multimodal Strategy:マルチモーダル ストラテジー)を検討する視点が、診察やリハビリの場面では大切と考えられます。
参考文献
-
Effects of exercise-induced hypoalgesia on pressure pain threshold in patients with chronic musculoskeletal pain: A systematic review and meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41925114/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















