この記事の要点
- 日本語タイトル:初期膝OAに白血球除去PRP3回は5年後も有利か?
- 英語タイトル:Five-year real-world outcomes of short-course leukocyte-poor PRP versus standard conservative therapy in early-stage knee osteoarthritis.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーションや整形外科の外来で、膝の痛みで通院される方によく関係してくる話題です。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけ日常の診察でお話しするような、わかりやすい言葉に言い換えて説明していきます。
研究の背景・目的
PRP(Platelet-Rich Plasma:プレートレット・リッチ・プラズマ、多血小板血漿〈たけっしょうばんけっしょう〉)という、自分の血液から血小板を多く含む成分を取り出して関節に注射する治療は、膝の変形性関節症(Knee Osteoarthritis:ニー・オステオアースライティス、膝OA)で広く行われるようになってきています。
ただし、5年以上たったあとの長期的な結果を調べた研究はまだ少なく、「この治療は何年くらい効果が続くのか」を、はっきりした根拠をもって患者さんに説明しにくい状況があります。そこで、この研究ではその点を確かめることを目的としています。
調査の方法(対象など)
両方の膝に初期の変形性膝関節症(初期膝OA)がある116人を対象にしました。
治療は2つのグループに分けて行われました。1つは、運動療法や痛み止めの薬、装具などを組み合わせた「標準的な保存療法(手術をしない治療)」だけを行うグループです。もう1つは、その標準保存療法に加えて、白血球をできるだけ取り除いたPRP(白血球除去PRP:Leukocyte-poor Platelet-Rich Plasma、白血球の少ない多血小板血漿)を3回注射するグループです。
効果の評価には、痛みの強さを0〜10などの数値で表すVAS(Visual Analog Scale:ビジュアル・アナログ・スケール、視覚的アナログ尺度)、膝の痛みやこわばり、日常生活動作を質問票で評価するWOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index:ウエスタン・オンタリオ・マクマスター大学変形性関節症指数)、全身の健康状態や生活の質を質問票で評価するSF-36(Short Form-36:ショートフォーム36、36項目からなる健康関連QOL評価票)を使い、治療前(ベースライン)と5年後の状態を比べました。
研究の結果
5年後の時点では、痛みの強さを示すVAS、膝の機能を示すWOMAC、生活の質(QOL:Quality of Life、生活の質)を示すSF-36のどれも、2つのグループともに悪化していました。
また、標準保存療法だけのグループと、白血球除去PRPを3回追加したグループのあいだで、これらの数値に明らかな差は認められませんでした。
このことから、白血球除去PRPを3回行う短期コースだけでは、5年という長い期間で見たときに、標準保存療法と比べてはっきりとした優位性を示さない可能性があると考えられました。
結論:今回の研究でわかったこと
初期の変形性膝関節症(初期膝OA)の116人を対象にしたこの研究では、標準的な保存療法に白血球除去PRP3回を追加しても、5年後の痛み、膝の機能、生活の質(QOL)において、保存療法だけの場合と差はみられませんでした。
そのため、PRP治療の効果には続く期間に限界があることを念頭に置き、どのくらいの期間を見据えて治療計画を立てるかという「長期的な設計」が大事なポイントになると考えられます。
実際の診察ではどう考えるか
PRPを3回行えば、その後ずっと長期間にわたって症状が安定すると期待しすぎないことが大切です。
必要に応じてPRPを再度行う可能性や、運動療法・薬・装具などの保存療法を続けていくことも含めて、長い目で見た治療プランを患者さんと一緒に話し合い、共有しておくことが重要だと考えられます。
参考文献
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Five-year real-world outcomes of short-course leukocyte-poor PRP versus standard conservative therapy in early-stage knee osteoarthritis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41926442/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















