高齢女性TKA後、CKCとOKCのどちらを優先すべきか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:高齢女性TKA後、CKCとOKCのどちらを優先すべきか?
  • 英語タイトル:Comparison of closed and open kinetic chain exercises following total knee arthroplasty in elderly women: a randomized controlled trial.

ここでは、膝の人工関節の手術後のリハビリについてのお話をします。整形外科やリハビリテーションの現場でよく出てくるテーマです。できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の外来でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「TKA(Total Knee Arthroplasty、人工膝関節全置換術)」という膝の人工関節の手術を受けたあとの目標は、痛みを和らげることだけでなく、しっかり歩けるようになることです。そのためには、膝を伸ばす筋肉(膝伸展筋)の力をつけることが大切で、これは転ばないようにすることや、自分で生活を続けていくことにも関係します。
そこで、「OKC(Open Kinetic Chain、開放性運動連鎖)」と「CKC(Closed Kinetic Chain、閉鎖性運動連鎖)」という2種類の運動のどちらを優先したほうがよいかを比べた研究です。OKCは、足が床についていない状態で脚を動かす運動(例:椅子に座って足だけを伸ばす運動)を指し、CKCは、足を床につけた状態で体を動かす運動(例:立った姿勢での軽いスクワットなど)を指します。

調査の方法(対象など)

TKA(人工膝関節全置換術)を受けた高齢の女性36名を対象にしました。参加した方を、
1)CKC(閉鎖性運動連鎖)を中心に行うグループ、
2)OKC(開放性運動連鎖)を中心に行うグループ、
3)通常行われている標準的なリハビリだけを行うコントロール(比較対象)グループ、
の3つに、くじ引きのような方法(無作為割付)で分けました。
それぞれ12週間の運動プログラムを行い、次のような項目を調べました。膝を伸ばす・曲げる筋力、片脚でどれくらい立っていられるか(単脚立位時間)、
「Timed Up and Go(TUG、起立歩行テスト)」という、椅子から立ち上がって少し歩いてまた座るまでの時間を測るテスト、
「6分間歩行テスト(6-Minute Walk Test、6分間歩行)」という、6分間でどれくらいの距離を歩けるかを見るテスト、
膝の曲げ伸ばしの範囲(膝ROM:Range of Motion、関節可動域)、
「WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index、変形性膝関節症の痛みや機能を評価する質問票)」、
「VAS(Visual Analog Scale、痛みを0〜10などの目盛りで自己評価する方法)」を使って評価しました。

研究の結果

膝を伸ばす筋力は、どのグループでも増えていましたが、その中でもCKC(閉鎖性運動連鎖)のグループがいちばん大きく増えていて、もとの約122%になっていました。OKC(開放性運動連鎖)のグループは約102%、標準的ケアのみのコントロールグループは約97%の増加でした。
一方で、膝の曲げ伸ばしの範囲(ROM)や、静かに立つバランス・動きながらのバランス(静的・動的バランス)は、3つのグループすべてで良くなっていましたが、グループ同士で大きな差はみられませんでした。
6分間歩行テストでの歩ける距離は、どのグループでも伸びていましたが、その中ではCKCグループの伸びがいちばん大きい結果でした。
痛みの強さを示すVASや、日常生活の機能を評価するWOMACについては、3つのグループのあいだで明らかな差はみられませんでした。

結論:今回の研究でわかったこと

TKA(人工膝関節全置換術)を受けた高齢の女性では、CKC(閉鎖性運動連鎖)の運動のほうが、OKC(開放性運動連鎖)の運動よりも、膝を伸ばす筋力と歩く力の面で有利である可能性が示されています。そのため、手術後の早い時期から、安全面をしっかり確認しながら、CKCの運動をリハビリの中心として取り入れていくことに、意味があると考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

TKA(人工膝関節全置換術)のあとに行うリハビリでは、CKC(閉鎖性運動連鎖)の運動を基本にしつつ、OKC(開放性運動連鎖)の運動を補助的に組み合わせる方法が考えられます。手術の傷の状態や、人工関節(インプラント)の固定の具合などを確認しながら、無理のない範囲で、立った姿勢で体重をかける練習(立位荷重練習)を、できるだけ早い時期から計画的に進めていくことが役立つとされています。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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