痛くて後ろ手が回らない肩にEMG+エコー併用内旋運動は有効か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:痛くて後ろ手が回らない肩にEMG+エコー併用内旋運動は有効か?
  • 英語タイトル:Effect of shoulder internal rotation exercise with electromyographic and ultrasonographic biofeedback in patients with painful and restricted hand-behind-back motion: a randomized-controlled trial.

ここで取り上げるのは、肩のリハビリや整形外科の外来でよく問題になる「後ろに手を回すと痛い・回らない」という症状についての研究です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「後ろ手動作」とは、ズボンの後ろポケットに手を入れたり、エプロンのひもを結んだり、背中をかいたりするときのように、手を背中側に回す動きのことです。
この動きが痛くてうまくできない方に対して、「内旋運動(ないせんうんどう:肩を内側にひねる動き)」のトレーニングを行うときに、
・EMG(Electromyography:筋電図検査。筋肉がどれくらい働いているかを電気信号として測る方法)
・エコー(Ultrasonography:超音波検査。体の中の筋肉や腱などをリアルタイムで画像として見る方法)
を使って、その場で自分の筋肉の動きや状態を見ながら行うと、どれくらい効果が上乗せされるのかを調べた試験です。

調査の方法(対象など)

この研究は「ランダム化比較試験(らんだむかひかくしけん)」という方法で行われました。
ランダム化比較試験とは、患者さんをくじ引きのような方法でいくつかのグループに分けて、それぞれ違う治療を行い、効果を公平に比べる研究方法です。
今回は、hand-behind-back動作(ハンド・ビハインド・バック:手を背中の後ろに回す動き)で痛みと動きの制限がある肩の病気の患者さん48人を、3つのグループに分けました。
それぞれのグループで、4週間にわたって肩の内旋運動のトレーニングを行い、その効果を比べました。

研究の結果

一番大事な指標として、「C7–母指距離(しーせぶん–ぼしきょり)」という測り方を使いました。
C7とは首の付け根あたりにある第7頚椎(だいななけいつい)という骨で、首の後ろを触ると少し出っ張っている骨です。母指は親指のことです。
手を後ろに回したときに、親指の先がC7の骨にどれくらい近づくか(またはどれくらい離れているか)を距離として測り、後ろ手の可動域(動く範囲)の目安にしました。
このC7–母指距離について、時間の経過とグループの違いを合わせて解析したところ、「群×時間交互作用」が有意(p=0.007)という結果でした。
これは、EMGとエコー(US:Ultrasonographyの略)を併用したグループでは、内旋運動だけを行ったグループよりも、C7–母指距離の改善が大きかった、という意味になります。
一方で、痛みについても同じように解析すると、群×時間交互作用は有意(p=0.049)でしたが、そのあとに行った詳しい比較(事後解析)では、グループ同士の差ははっきりした有意差とは言えませんでした。
また、DASH(Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand:上肢全体の機能障害を評価する質問票)、筋力、その他の可動域については、グループ間で有意な差は認められませんでした。

結論:今回の研究でわかったこと

EMGとUS(超音波)を使って、その場で自分の筋肉の働きや動きを見ながら行う内旋運動は、C7–母指距離、つまり「どこまで後ろに手が回るか」という可動域を統計的に有意に改善していました。
一方で、痛みの強さや、DASHスコア(腕・肩・手の使いにくさの自己評価)、筋力、ほかの方向の可動域については、はっきりとした追加効果があるとは言い切れない結果でした。

実際の診察ではどう考えるか

日常診療で考えると、「後ろに手を回す動きの範囲を広げたい」という目的に対しては、EMGとエコーを使ってフィードバックを受けながら行う内旋運動は、ひとつの有望な方法と考えられます。
ただし、この方法で痛みが大きく減るかどうか、DASHで評価される日常生活の使いやすさがどこまで良くなるか、筋力や他の方向の動きがどれくらい良くなるかについては、今回の研究では効果が限られている可能性が示されています。
そのため、実際のリハビリでは、この方法を取り入れるかどうかは、ほかの治療や患者さんの状態と合わせて、個別に検討していくことになると考えられます。


参考文献

  • Effect of shoulder internal rotation exercise with electromyographic and ultrasonographic biofeedback in patients with painful and restricted hand-behind-back motion: a randomized-controlled trial.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42479348/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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