この記事の要点
- 日本語タイトル:ローテーターカフ関連肩痛に対するKTの位置づけは?
- 英語タイトル:Kinesiotaping effects in patients with rotator cuff-related shoulder pain: A systematic review and meta-analysis.
このテーマは、リハビリテーションや整形外科の外来で、肩の痛みの患者さんを診るときによく出てくる話題です。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察室でお話しするようなイメージで説明していきます。
研究の背景・目的
「ローテーターカフ(rotator cuff)」とは、肩の関節を安定させたり腕を動かしたりする、いくつかの筋肉と腱(けん:筋肉の端の丈夫なひも状の組織)の総称です。
このローテーターカフの周りに原因がある肩の痛みを「ローテーターカフ関連肩痛(rotator cuff-related shoulder pain)」と呼びます。
この肩の痛みは、筋肉や腱の負担、姿勢、年齢による変化、使いすぎなど、いろいろな要素が重なって起こる「多因子性」の病気と考えられています。
現在の診療ガイドライン(専門家がまとめた治療の目安)では、まず
「教育(education:病気の仕組みや痛みとの付き合い方を説明すること)」と
「能動的リハビリテーション(active rehabilitation:自分で体を動かす運動療法)」を中心に行うことがすすめられています。
一方で、「キネシオテーピング(Kinesio taping:伸びるテープを皮膚に貼って、筋肉や関節の動きをサポートしようとする方法)」、略して「KT」は、現場ではよく使われていますが、
本当にどのくらい効果があるのかについては、まだ意見が分かれています。
この研究は、ローテーターカフ関連肩痛の患者さんに対して、KTがどの程度役に立つのかを、これまでの研究をまとめて整理することを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は、「システマティックレビュー(systematic review:過去の研究をルールに沿って集めて、全体として評価する方法)」と
「メタアナリシス(meta-analysis:集めた研究の結果を統計的にまとめ直す方法)」という手法で行われました。
対象としたのは、「ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT。治療法をくじ引きのようにランダムに分けて、公平に比べる研究)」です。
ローテーターカフ関連肩痛(RCRSP:rotator cuff-related shoulder pain)の患者さんを対象にした39件のRCTが集められ、合計で2,481人分のデータがまとめられました。
これらの研究では、KTを貼ったグループと、
「シャムテープ(sham tape:見た目は似ているが、効果が出ないように貼ったテープ)」や
「テーピングなし」などのグループを比較していました。
評価した項目は、
「痛み(特に動いたときの痛みや夜間の痛み)」、
「肩の機能(腕がどれくらい使えるか、日常生活でどれくらい困るか)」、
「可動域(ROM:Range of Motion。肩がどこまで動かせるか)」などです。
研究の結果
39件のRCT、合計2,481人分のデータをまとめて解析したところ、KTを使うことで、
肩の機能と、動いたときの痛みについては「small effect size(小さい効果)」と評価される程度の、わずかな改善がみられました。
短い期間で見た場合、肩の機能、活動時の痛み、夜間の痛みのいずれも、KTによる利益は「小さい改善」にとどまっていました。
一方で、可動域(ROM:肩がどこまで動くか)についての効果は、はっきりとは言えず、「不確実」と判断されています。
また、これらの結果を支える「エビデンスの確実性(evidence certainty:どれくらい信頼できる結果か)」は、
全体として「低い〜非常に低い」と評価されており、今後の研究で結論が変わる可能性があると考えられています。
結論:今回の研究でわかったこと
39件のRCT、2,481人分の結果をまとめると、KTはローテーターカフ関連肩痛の患者さんに対して、
肩の機能や、活動時・夜間の痛みを「短期的に、少しだけ」改善している可能性がある、という結論でした。
ただし、その効果は大きいとは言えず、あくまで「小さな改善」にとどまっています。
可動域(ROM)への影響については、はっきりした結論が出ておらず、不確実とされています。
そのため、ローテーターカフ関連肩痛の治療では、これまで通り
「教育(病気や痛みの説明)」と「運動療法(自分で体を動かすリハビリ)」を治療の中心にして、
KTはあくまで「補助的な手段」として位置づける、という考え方が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
この研究の結果からは、KTの効果は「短期的に、少しだけ良くなるかもしれない」という程度にとどまり、
その根拠となるデータの確実性も「低い〜非常に低い」と評価されています。
そのため、KTだけに頼るのではなく、
病気や痛みについてしっかり説明を受けること(教育)と、肩や体を自分で動かす運動療法を治療の柱として続けていくことが大切と考えられます。
KTは、「必要に応じて追加で使う選択肢のひとつ」として考える、という姿勢が重要だとされています。
参考文献
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Kinesiotaping effects in patients with rotator cuff-related shoulder pain: A systematic review and meta-analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42529008/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


