この記事の要点
- 日本語タイトル:ACL再建術後リハにNMES追加で筋機能は向上する?
- 英語タイトル:Neuromuscular Electrical Stimulation after Anterior Cruciate Ligament Reconstruction.
ここでは、膝の前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい:Anterior Cruciate Ligament/ACL)が切れて手術を受けたあと、リハビリの中で「筋肉に電気刺激を流す治療」を追加するとどうなるか、という研究を紹介します。
リハビリや整形外科の外来でよく話題になる内容なので、専門用語もできるだけかみくだいてお話しします。
研究の背景・目的
ACL(前十字靱帯:Anterior Cruciate Ligament)は、膝の中で太ももの骨とすねの骨をつないで、膝がぐらつかないように支えている大事な靱帯です。
ACLをケガして「再建術(さいけんじゅつ:切れた靱帯の代わりに自分の腱などを移植して作り直す手術)」を受けたあと、多くの方で太ももの前の筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん:膝を伸ばす主な筋肉)が細くなったり、筋力が落ちたりしやすいことが知られています。
この筋力低下は、スポーツへの復帰のしやすさや、もう一度ACLを切ってしまう「再断裂(さいだんれつ)」のリスクにも影響する可能性があると考えられています。
そこで、この研究では、手術後のリハビリで大腿四頭筋の筋力や筋肉の状態を少しでも良くするために、「神経筋電気刺激(しんけいきんでんきしげき:Neuromuscular Electrical Stimulation/NMES)」という電気で筋肉を収縮させる治療を追加すると、どのくらい効果があるのかを調べることを目的としました。
調査の方法(対象など)
この研究は、ACL再建術(Anterior Cruciate Ligament Reconstruction:前十字靱帯再建術)を受けた男性24人を対象にした「ランダム化比較試験(らんだむかひくしけん:Randomized Controlled Trial/RCT)」という方法で行われました。
ランダム化比較試験とは、参加した人をくじ引きのような方法でグループに分けて、どちらの治療がより効果的かを公平に比べる研究のやり方です。
この研究では、手術後のリハビリだけを行う「リハビリ単独群」と、リハビリの中で筋トレの一種である「抵抗運動(ていこううんどう:重りやマシンなどで負荷をかける運動)」に加えて、NMES(神経筋電気刺激)も一緒に行う「抵抗運動+NMES併用群」の2つのグループに無作為(むさくい:ランダム)に分けました。
そのうえで、太ももの筋力、片脚立ちなどのバランス能力、筋肉の形や大きさ(筋形態:きんけいたい)、そして患者さん自身が感じる膝の状態を評価する「患者報告アウトカム(かんじゃほうこくあうとかむ:患者さんが自分で記入する質問票による評価)」を比較しました。
研究の結果
太ももの前の筋肉である大腿四頭筋の「等速性筋機能(とうそくせいきんきのう:Isokinetic Muscle Function/一定の速度で膝を曲げ伸ばししたときの筋力を機械で測定したもの)」は、どちらのグループでも良くなっていました。
ただし、その改善の大きさを示す「効果量(こうかりょう:Effect Size/どのくらい変化したかを数値で表したもの)」を比べると、NMESを併用したグループの方が大きく、d=0.883〜1.488という値でした。これは、運動だけのグループよりも改善の度合いが大きかったことを示しています。
また、膝の状態を評価する質問票としてよく使われる「Lysholmスコア(リショルムスコア:膝の痛みや安定性、日常生活での困りごとなどを点数化したもの)」では、NMES併用群の効果量がd=1.527、運動単独群がd=0.653でした。
同じく膝の機能を総合的に評価する「IKDCスコア(International Knee Documentation Committee score:国際膝文書委員会スコア/膝の症状やスポーツ活動のしやすさなどを評価する質問票)」では、NMES併用群の効果量がd=1.006、運動単独群がd=0.034でした。
いずれの指標でも、NMESを併用したグループの方が、運動だけのグループよりも効果量が大きいという結果でした。
結論:今回の研究でわかったこと
ACL再建術を受けた男性24人を対象にしたランダム化比較試験の結果として、手術後のリハビリで行う抵抗運動にNMES(神経筋電気刺激)を追加すると、太ももの前の筋肉である大腿四頭筋の筋力や筋肉の形・大きさ(筋形態)、バランス能力、そして患者さん自身が感じる膝の状態(患者報告アウトカム)について、いずれも「効果量」が一貫して大きいことが示されました。
つまり、この研究の範囲内では、運動だけの場合と比べて、運動にNMESを組み合わせた方が、これらの指標の改善がより大きかったという結果になっています。
実際の診察ではどう考えるか
この研究は、対象が24人と少なく、しかも男性のみで行われた小規模な試験です。また、スポーツへの復帰率(どのくらいの人が元のレベルのスポーツに戻れたか)や、ACLの再断裂率(もう一度靱帯を切ってしまった人の割合)といった点は評価されていません。
それでも、太ももの筋力や筋肉の形・大きさ、バランス能力、患者さん自身が感じる膝の状態(患者報告アウトカム)については、どの項目でもNMESを併用したグループの方が効果量が一貫して大きかった、という結果が示されています。
実際の診察では、こうした研究結果を参考にしつつも、年齢や性別、スポーツの種類、ケガの程度など、一人ひとりの状況に合わせて、主治医や理学療法士と相談しながらリハビリの内容を決めていくことが大切になります。
参考文献
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Neuromuscular Electrical Stimulation after Anterior Cruciate Ligament Reconstruction.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42349518/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


