この記事の要点
- 日本語タイトル:片頭痛・首・腰の痛みは共通機序で理解すべきか?
- 英語タイトル:Common Mechanisms in Migraine, Migraine-Related Neck Pain, and Low Back Pain: Implications for Treatment.
ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科など、日常診療でよく問題になるテーマです。
医学用語(専門用語)は、最初に出てきたときに英語の正式名称とあわせて説明しながら、できるだけ日常のことばでお話ししていきます。
研究の背景・目的
「片頭痛(Migraine:ズキズキするような頭痛を繰り返す病気)」、「片頭痛に関連した首の痛み(Migraine-Related Neck Pain:片頭痛の前後や同時に出る首の痛み)」、「腰痛(Low Back Pain:腰のあたりに出る痛み)」は、同じ人に同時にみられることが少なくありません。
これらの痛みは、からだの一部だけの問題ではなく、「中枢性疼痛処理障害(Central Pain Processing Disorder:脳や脊髄など痛みを感じる中枢神経の処理のしかたが変化している状態)」として、共通したしくみを持っている可能性があると考えられています。
この研究では、その共通したしくみが本当にありそうかどうかを整理することを目的としています。
調査の方法(対象など)
この研究は、「ナラティブレビュー(Narrative Review:研究者が既に発表されている多くの論文を集めて、全体の流れや特徴をまとめて解説する方法)」という形で行われました。
医学論文データベースである「PubMed(パブメド:世界中の医学論文を検索できるサイト)」と「Web of Science(ウェブ・オブ・サイエンス:科学分野の論文を幅広く検索できるデータベース)」を使って、3つの病気に関する研究を集めています。
集めたのは、「臨床研究(Clinical Studies:実際の患者さんを対象にした研究)」と「神経生理学研究(Neurophysiological Studies:脳や神経の働きを電気信号などで調べる研究)」です。
それらを統合して、「中枢性感作(Central Sensitization:脳や脊髄が痛みに敏感になり、痛みを感じやすくなっている状態)」や「痛みの拡大(Pain Spread:最初は一部だけだった痛みが、だんだん広い範囲に広がっていくこと)」、そして治療に関する「エビデンス(Evidence:科学的根拠)」を整理しています。
研究の結果
3つの病気に共通して、「皮質過興奮(Cortical Hyperexcitability:大脳皮質という脳の表面の部分が、刺激に対して過敏に反応しやすくなっている状態)」がみられることが示されています。
また、「下行性疼痛抑制障害(Impairment of Descending Pain Inhibition:本来は脳から脊髄に向かって“痛みを抑える信号”が出るのですが、その働きが弱くなっている状態)」も共通しているとされています。
さらに、「侵害受容処理(Nociceptive Processing:痛みのもとになる刺激を、脊髄や脳がどのように受け取り・処理するかという仕組み)」が、脊髄レベルと脳レベルの両方で変化していることも報告されています。
このような状態が続くと、「持続侵害入力(Persistent Nociceptive Input:長いあいだ続く痛みの刺激)」がたまり、「マルチサイトペイン(Multisite Pain:からだの複数の場所に痛みが出ている状態)」が形成されやすくなると考えられています。
そのうえで、「運動機能障害(Motor Dysfunction:からだの動きが硬くなる、うまく動かしにくくなるなどの状態)」、「恐怖回避(Fear-Avoidance:痛みが怖くて動くことを避けてしまう考え方や行動)」、「QOL低下(Quality of Life:生活の質が下がること)」が、痛みを長引かせる要因として関わっていると整理されています。
結論:今回の研究でわかったこと
片頭痛、片頭痛に関連した首の痛み、腰痛は、「中枢性感作(Central Sensitization:脳や脊髄が痛みに敏感になっている状態)」など、いくつかの共通したしくみを持っていると考えられます。
そのため、「機序に基づく薬物療法(Mechanism-Based Pharmacotherapy:痛みの原因となっている仕組みに合わせて薬を選ぶ治療)」と「運動療法(Exercise Therapy:筋力トレーニングやストレッチなど、体を動かすことで痛みや機能を改善していく治療)」を組み合わせることが大切だとされています。
さらに、「CGRP標的薬(Calcitonin Gene-Related Peptide Targeted Drugs:カルシトニン遺伝子関連ペプチドという物質を標的にした薬で、片頭痛の治療に使われる薬)」をあわせて用いることで、これらを統合した介入(Integrated Intervention:いくつかの治療法を組み合わせて行う治療)が重要になる可能性が示されています。
実際の診察ではどう考えるか
片頭痛と首の痛み、腰痛が同時にみられる患者さんでは、「その場所だけの問題」として局所の治療だけを行うのではなく、「中枢性感作(Central Sensitization:痛みを感じる神経の過敏さ)」がどの程度関わっているかを考えることが大切になります。
あわせて、「恐怖回避(Fear-Avoidance:痛みが怖くて動くことを避けてしまう状態)」がないか、「運動機能障害(Motor Dysfunction:動きの悪さや筋力低下など)」がどのくらいあるかなどを、全体として統合的に評価していく視点が必要だと考えられます。
参考文献
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Common Mechanisms in Migraine, Migraine-Related Neck Pain, and Low Back Pain: Implications for Treatment.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42521953/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。


