膝蓋腱障害アスリートにRPW追加は本当に必要?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:膝蓋腱障害アスリートにRPW追加は本当に必要?
  • 英語タイトル:Efficacy of Radial Pressure Wave Therapy Combined With Exercise in Physically Active Athletes With Patellar Tendinopathy: A Randomized Controlled Trial.

ここでは、スポーツ現場や整形外科の外来でよく問題になる「膝蓋腱障害(パテラーテンディノパシー)」という膝の痛みについてお話しします。
できるだけ専門用語をかみくだいて、普段の診察でお話しするような形で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

「膝蓋腱障害(英語:Patellar tendinopathy)」は、膝のお皿(膝蓋骨)とすねの骨をつないでいる「膝蓋腱」に起こる慢性的な痛みや障害のことです。ジャンプやダッシュを繰り返す競技の選手に多く、「ジャンパー膝」と呼ばれることもあります。
この研究では、すでに長く症状が続いている「慢性の膝蓋腱障害」を持つアスリートに対して、「運動療法(リハビリとしてのトレーニング)」だけを行う場合と、「ラジアル圧波治療(英語:Radial Pressure Wave therapy:体の表面から衝撃波に近い圧力の波を当てる治療)」を運動療法に追加した場合とで、どちらがより効果的かを比べることを目的としています。

調査の方法(対象など)

日本の大学の運動部に所属するアスリート33人を対象にした研究です。
「オープンラベル無作為化比較試験」といって、
・「無作為化(ランダム化)」:くじ引きのように偶然で2つのグループに分ける方法
・「比較試験」:2つの治療法を比べる方法
・「オープンラベル」:患者さんも医療者も、どちらの治療を受けているか知っている状態
という形で行われました。
RPW群(ラジアル圧波治療を受けるグループ)17人は、週1回のラジアル圧波治療に加えて、毎日下肢(脚)の運動を行いました。
対照群16人は、ラジアル圧波治療は行わず、運動療法のみを行いました。
症状の評価には「VISA-P-Jスコア」という、日本語版の膝蓋腱障害用の質問票(痛みやスポーツ活動のしやすさを点数化したもの)を使い、治療開始から28週(約7か月)まで経過を追って点数の変化を調べました。

研究の結果

VISA-P-Jスコア(膝の状態を点数で表したもの)は、治療前(ベースライン)ではRPW群が68.8点、対照群が67.4点でした。
4週後にはRPW群77.6点、対照群72.7点、16週後にはRPW群82.5点、対照群78.5点、28週後にはRPW群89.9点、対照群77.4点となりました。
どちらのグループでも、時間とともに点数が上がっており、膝の状態は統計学的にみて「有意に(偶然とは言いにくいレベルで)」良くなっていました。
一方で、「症状がどれくらい長く続いていたか(症状持続期間)」の違いを考慮して計算し直すと、2つのグループの点数の差は「統計学的に有意」とはいえない結果になりました。つまり、見かけ上はRPW群の方が点数が高くなっていますが、症状が続いていた期間の違いを調整すると、その差ははっきりしたものとはいえない、という結果です。

結論:今回の研究でわかったこと

慢性の膝蓋腱障害を持つアスリート33人を対象としたランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial:無作為化比較試験)では、運動療法だけを行ったグループも、運動療法にラジアル圧波治療(RPW)を追加したグループも、VISA-P-Jスコアが「臨床的に意味がある」と考えられる程度に改善していました。
28週の時点で、単純に点数を比べるとRPWを追加したグループの方が高いスコアでしたが、「症状がどれくらい長く続いていたか」という要素で調整して解析すると、その差は統計学的に有意とはいえない結果になりました。

実際の診察ではどう考えるか

この研究は、患者さんも医療者もどちらの治療を受けているか知っている「盲検化されていないオープンラベル試験」で行われています。そのため、「治療を受けている」という意識が結果に影響している可能性があります。
また、「症状がどれくらい長く続いていたか(症状持続期間)」が結果に影響を与える「交絡因子(結果をまぎらわせる要因)」になっていた可能性も考えられます。
こうした点をふまえると、まずは運動療法をしっかり行うことが基本になり、そのうえでラジアル圧波治療(RPW)は、状況に応じて追加で検討する選択肢のひとつとして考える、という位置づけになります。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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