多疾患併存患者に12週間の運動療法と自己管理支援で血圧や炎症は改善するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:多疾患併存患者に12週間の運動療法と自己管理支援で血圧や炎症は改善するか?
  • 英語タイトル:Effect of exercise therapy and self-management support on multimorbidity: Secondary analysis of the MOBILIZE trial.

ここで取り上げる内容は、リハビリテーション科や整形外科の外来で、日常的によく問題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、そのつど「英語の正式名称」と「日本語での意味」を添えて、できるだけわかりやすくお話ししていきます。

目次

研究の背景・目的

「多疾患併存(たしっかんへいそん)患者」とは、複数の慢性的な病気を同時にもっている方のことを指します。英語では「multimorbidity(マルチモービディティ)」と呼びます。
こうした多疾患併存の方では、体の中で炎症が長く続く「慢性炎症(chronic inflammation)」や、「高血圧(hypertension:血圧が高い状態)」、「血糖異常(glucose abnormality:血糖値が高い・コントロールが悪い状態)」、「脂質異常(dyslipidemia:コレステロールや中性脂肪のバランスが悪い状態)」が重なりやすくなります。
その結果、「心血管リスク(cardiovascular risk:心臓や血管の病気を起こしやすくなる危険性)」が高くなることが知られています。
この研究では、「運動療法(exercise therapy:医師や理学療法士などの指導のもとで行う計画的な運動)」が、こうした血液検査の値や血圧などのバイオマーカー(biomarker:体の状態を数字で表す指標)を、どの程度まで改善できるのかを調べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

この研究は、「MOBILIZE試験(MOBILIZE trial:多疾患併存の方を対象にした臨床試験)」の結果を、あらためて詳しく調べ直す「二次解析(secondary analysis:すでに行われた試験データを別の角度から解析する方法)」として行われました。
対象となったのは、多疾患併存のある成人228名です。
この方たちに対して、ふだん受けている「通常診療(usual care:いつも通りの診察や薬物治療など)」に加えて、12週間のグループ運動セルフマネジメント支援(self-management support:自分で病気を管理する力をつけるための支援や教育)を行ったグループと、通常診療だけのグループを比べました。
そして、両グループの間で、「炎症(体の中の慢性的な炎症の程度)」「血糖(血糖値の状態)」「脂質(コレステロールや中性脂肪などの脂質の状態)」「血圧(特に上の血圧)」がどう違うかを比較検討しました。

研究の結果

運動療法とセルフマネジメント支援を追加した「介入群(intervention group:特別な治療やプログラムを受けたグループ)」では、通常診療だけの「通常診療群(control group:比較対象となるグループ)」と比べて、収縮期血圧(systolic blood pressure:いわゆる「上の血圧」)が平均4.7mmHg低下していました。
「炎症マーカー(inflammatory markers:炎症の強さを示す血液検査の値)」や、「血糖マーカー(glucose markers:血糖の状態を示す値)」、「脂質マーカー(lipid markers:脂質の状態を示す値)」については、統計的に明らかな差(有意差)は出ませんでしたが、全体としては介入群のほうが良い方向に変化している傾向がみられました。
さらに、「感度分析(sensitivity analysis:解析方法を変えても結果が変わらないかを確認する追加の解析)」を行っても、同じような結果が得られており、結果の方向性は一貫していました。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究では、多疾患併存のある方に対して、12週間の運動療法と自己管理支援(セルフマネジメント支援)を、ふだんの診療に追加すると、収縮期血圧(上の血圧)が平均で約5mmHg低下していました。
このことから、多疾患併存の患者さんにおいて、薬を使わない方法(非薬物療法)の一つとして、運動療法と自己管理支援を組み合わせることが、血圧の管理に役立つ可能性があると考えられます。

実際の診察ではどう考えるか

多疾患併存の患者さんの診療では、薬による治療(薬物療法)だけでなく、あらかじめ内容や頻度を決めて計画的に行う運動(構造化された運動)と、自己管理支援(自分で病気をコントロールする力を高める支援)を組み込むことが一つの選択肢になります。
この研究結果からは、こうした運動と自己管理支援を、薬物療法と併せて行うことで、血圧コントロールをめざす戦略に、一定の有用性がある可能性に注目できると考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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