高齢入院患者の転倒はどの介入で減らせるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:高齢入院患者の転倒はどの介入で減らせるか?
  • 英語タイトル:Interventions for preventing falls in older people in hospitals.

ここで取り上げる「転倒(てんとう)」とは、入院中にベッドやいす、トイレなどからバランスを崩して倒れてしまうことを指します。とくにリハビリテーション科(Rehabilitation:けがや病気のあとに、体の機能回復を目指す診療科)や整形外科(Orthopedics:骨や関節、筋肉などの病気やけがを扱う診療科)では、日常的に問題になるテーマです。
専門的な内容を含みますが、できるだけ日常の外来でお話しするような言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

高齢の方は、筋力の低下やバランスの悪さ、視力の低下、飲んでいるお薬の影響などが重なり、入院中に転倒しやすくなります。病院の中で起こる高齢者の転倒は数が多く、その一部は骨折(骨が折れるけが)や、場合によっては命に関わる状態につながることがあります。このため、「どんな対策(介入:Intervention/転倒を減らすために行う具体的な取り組み)が、どのくらい役に立つのか」を整理しておく必要がある、という問題意識からこの研究が行われました。

調査の方法(対象など)

この研究では、65歳以上の高齢の方で、一般病棟や回復期リハビリテーション病棟(急性期の治療が一段落したあと、自宅や施設に戻るためのリハビリを集中的に行う病棟)に入院している患者さんを対象にした55の臨床試験(Clinical trial:実際の患者さんで効果を調べる研究)をまとめて検討しました。
そこで、
・運動療法(Exercise therapy:筋力やバランスを鍛える体操や歩行練習など)
・薬剤最適化(Medication optimization:転倒しやすくなるお薬を見直し、種類や量を調整すること)
・サービスモデル変更(Service model change:病棟のスタッフ配置や見守りの仕組みなど、ケアのやり方全体を見直すこと)
・教育(Education:患者さんやご家族、スタッフに向けた転倒予防の説明や指導)
・多因子介入(Multifactorial intervention:上記のような複数の対策を組み合わせて行うこと)
といった取り組みが、それぞれどのくらい転倒を減らせるのかを比較して調べました。

研究の結果

急性期病院(Acute care hospital:肺炎や心筋梗塞など、急に悪くなった病気の治療を主に行う病院)では、病棟全体のサービスモデルを変える取り組みを行うと、転倒の回数(転倒率)が約55%少なくなる可能性があると報告されました。また、テイラーメイド教育(Tailor-made education:患者さん一人ひとりの状態や理解度に合わせて内容を調整した転倒予防の説明や指導)は、転倒率を約27%減らせる可能性があるとされています。さらに、現場の状況や患者さん・ご家族の特徴に合わせて組み立てた統合介入(Integrated intervention:病棟スタッフと患者さん・家族が一緒になって行う、複数の対策を組み合わせた取り組み)は、転倒率を約32%減らせる可能性があると示されました。
一方で、運動療法だけ、あるいは薬剤最適化だけといった単独の対策では、転倒を確実に減らせるとは言い切れない、つまり効果がはっきりしないという結果でした。

結論:今回の研究でわかったこと

今回まとめられた研究からは、急性期病棟でのケアモデル(Care model:病棟の運営の仕方やスタッフの役割分担、見守りの方法など)を見直すことと、患者さん・ご家族・医療スタッフに対する教育を中心に、多職種(Multidisciplinary:医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師などいろいろな職種)が協力して、病棟全体の仕組みを組み替えていくことが、現時点ではもっとも有望な転倒予防の方法と考えられる、という結論が示されています。ただし、どの病院にもそのまま当てはまるとは限らず、あくまで「有望な選択肢の一つ」として理解しておく必要があります。

実際の診察ではどう考えるか

診療の現場では、「運動療法だけをがんばる」「お薬の調整だけをする」といった一つの対策に頼りきりにするのではなく、病棟のケア体制(見守りの方法やスタッフの動き方など)を見直すこと、テイラーメイド教育で患者さんご本人やご家族に転倒予防をわかりやすく伝えること、多職種とご家族を含めたチームで、転倒予防の取り組みをパッケージとして組み合わせていくことが大切と考えられます。そして、それぞれの病院や病棟の実情に合わせて、そのパッケージを少しずつ見直し、続けて改善していく姿勢が重要だと解釈できます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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