TKA後4時間以内のHAL開始で1年後QOLは改善するか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:TKA後4時間以内のHAL開始で1年後QOLは改善するか?
  • 英語タイトル:Effect of early hybrid assistive limb assisted rehabilitation on functional outcomes and patient satisfaction after total knee arthroplasty: a randomized controlled trial.

ここでは、膝の人工関節の手術後のリハビリについてのお話をします。
ふだん整形外科やリハビリの現場でよく話題になる内容ですが、できるだけ専門用語をかみくだいて、イメージしやすいように説明していきます。

目次

研究の背景・目的

【背景】TKA(Total Knee Arthroplasty、トータル・ニー・アーソロプラスティ)は、変形性膝関節症などで傷んだ膝の関節を人工関節に置き換える手術のことです。
このTKAのあとには、できるだけ早くリハビリテーション(Rehabilitation、機能回復のための訓練)を始めることが一般的な標準治療になっています。ただし、実際には「受動運動」が中心になっていることが多いです。受動運動とは、自分の筋肉の力ではなく、理学療法士さんなどに膝を動かしてもらうような運動のことを指し、「能動運動(自分の筋肉を使って自分で動かす運動)」が少ないという指摘があります。
ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb、ハイブリッド・アシスティブ・リム)は、体に装着して、筋肉から出るわずかな電気信号を読み取り、動きをアシストしてくれる装置です。このHALを使って、TKAの手術後4時間以内という、とても早いタイミングからリハビリを始めた場合に、1年後のQOL(Quality of Life、生活の質:日常生活のしやすさや満足度などを含む指標)がどのくらい良くなるのかについては、これまでよくわかっていませんでした。そこで、この点を調べることがこの研究の目的でした。

調査の方法(対象など)

【対象と方法】この研究では、変形性膝関節症(Knee Osteoarthritis、膝の軟骨がすり減って痛みや変形が出る病気)に対して、初めてTKAを受ける患者さん68人を対象にしました。
患者さんを次の3つのグループに分ける方法として、「単盲検ランダム化試験(Single-blind Randomized Controlled Trial、患者さん側はどのグループか知らされず、コンピューターなどで無作為にグループ分けする方法)」が用いられました。
グループは以下の3つです。
・手術後4時間以内に単関節用HAL(HAL-SJ:Single Joint type Hybrid Assistive Limb)を使い始めるグループ(Early HAL-SJ群)
・通常のタイミングからHALを使い始めるグループ(HAL-SJ群)
・HALを使わないグループ(HALなし群、Control群)
これら3グループで、手術から12か月後のKOOS-QOL(Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score – Quality of Life、膝のけがや変形性膝関節症に対するQOLを評価する質問票のスコア)を比較しました。あわせて、「伸展ラグ(Extension Lag、膝をまっすぐ伸ばしたいのに、筋力などの問題で完全には伸びきらない状態)が回復するまでの期間」や、「手術後1週間時点での膝の曲がり具合(膝屈曲ROM:Range of Motion、どこまで曲げられるかの角度)」なども比べました。

研究の結果

【結果】Early HAL-SJ群では、HALを使わないControl群と比べて、手術から12か月後のKOOS-QOLのスコアが統計学的に有意に高く、QOLがより良い状態でした。また、伸展ラグの回復までの期間も、通常タイミングでHALを使ったHAL-SJ群や、HALなしのControl群よりも早いという結果でした。
さらに、手術後1週間の時点での膝の曲がる角度(膝屈曲ROM)も、Early HAL-SJ群が他のグループより大きく、よく曲がっていました。
痛みや腫れ(腫脹:しゅちょう)が悪化したという所見はなく、短い期間での膝の機能と、長い期間でのQOLの両方で、統計学的に有意な改善がみられたと報告されています。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究から、TKAの手術後4時間以内という非常に早いタイミングで、単関節用HALを導入してリハビリを行うことで、12か月後のKOOS-QOLのスコアと、膝を伸ばす機能(伸展機能)が良くなっていたことが示されました。
また、このような早い時期からの能動運動(自分で筋肉を使って動かす運動)を行っても、痛みが強くなるといった悪化はみられなかったとされています。これらの結果から、TKA後の早い段階で、HALを用いて能動的に動かすリハビリを取り入れることには、一定の意義がある可能性が示唆されています。

実際の診察ではどう考えるか

【臨床のヒント】実際の診療の場では、TKAのあとに、手術後4時間以内という早い段階からでも、安全に患者さん自身の能動運動をサポートできる体制を整えることが大切だと考えられます。
HALという機器を使うかどうかにかかわらず、こうした「超早期の自分で動かす運動(超早期自動運動)」を、どのようにリハビリの計画に組み込んでいくかを検討していくことが望まれる、というのがこの研究からの示唆です。


参考文献

  • Effect of early hybrid assistive limb assisted rehabilitation on functional outcomes and patient satisfaction after total knee arthroplasty: a randomized controlled trial.

    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41804269/


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • テニス

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

  • かわな いりなか 八事エリア
  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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