この記事の要点
- 日本語タイトル:アキレス腱・膝蓋腱障害は保存療法をどう開始すべきか?
- 英語タイトル:UK defence rehabilitation review of Achilles and patellar tendinopathy conservative management: a systematic review.
ここでは、ふくらはぎの「アキレス腱」と、膝のお皿の下にある「膝蓋腱(しつがいけん)」の痛みについて、手術をしない治療をどう始めるかをまとめた論文を紹介します。
リハビリテーションや整形外科の外来でよく出てくる話題なので、専門用語はできるだけかみくだいてお話しします。
研究の背景・目的
アキレス腱と膝蓋腱の障害(英語では「tendinopathy(テンダノパシー:腱に起こる慢性的な痛みや機能低下の総称)」と呼びます)は、軍人のように日常的に激しい運動をする人たちでよくみられる、長く続きやすい慢性の障害です。
この障害を診断するための「ゴールドスタンダード検査(最も信頼できる標準的な検査方法)」は、現時点でははっきり決まっていません。
また、手術をしない治療(保存療法)の中で、どの治療を優先して行うべきか、順番や位置づけを整理することが課題となっていました。
調査の方法(対象など)
この研究では、2017年5月から2023年7月までの間に、医学論文データベースであるPubMed(パブメド:世界中の医学論文を検索できるサイト)を使って論文を探しました。
対象としたのは、アキレス腱・膝蓋腱障害に関する「診断の指標(どのように診断するかの基準)」「医療的な介入(薬や注射など)」「運動療法(リハビリとして行う運動)」「補助療法(物理療法など、運動以外で補助的に行う治療)」に関する研究です。
論文の選び方やまとめ方については、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses:システマティックレビューとメタアナリシスの報告基準)という、論文を系統的にまとめるときの国際的なルールに沿って行われました。
研究の結果
手術をしない治療(保存療法)の中では、「運動療法」が中心的な役割を持つと考えられました。
とくに、Progressive Tendon Loading Exercise(PTLE:プログレッシブ・テンドン・ローディング・エクササイズ、進行性腱負荷エクササイズ)と呼ばれる方法が有力とされました。これは、腱にかかる負荷(力のかかり方)を、段階的に少しずつ増やしていくタイプの運動療法です。
一方で、注射治療や物理療法(電気治療、超音波などの機械を使った治療)は、現時点での科学的な根拠(エビデンス)が限られており、最初に選ぶ治療(第一選択)とまではいえないとまとめられました。
結論:今回の研究でわかったこと
今回の論文のまとめでは、進行性腱負荷エクササイズ(PTLE)を中心とした運動療法を、まず最初に行う治療の選択肢(第一選択)とする考え方が妥当とされています。
注射治療や物理療法は、あくまで補助的な位置づけで、運動療法に追加して慎重に組み合わせていく方針が適切と考えられました。
実際の診察ではどう考えるか
実際の診察では、まずProgressive Tendon Loading Exercise(進行性腱負荷エクササイズ:PTLE)を治療の軸として考えます。
患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて、どのくらいの強さ・回数で負荷をかけるか、どの種目を行うかを個別に調整していきます。
そのうえで、痛みの程度や経過を見ながら、注射治療や物理療法は、運動療法に「追加する補助的な選択肢」として位置づけていく、という考え方になります。
参考文献
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UK defence rehabilitation review of Achilles and patellar tendinopathy conservative management: a systematic review.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39979017/
※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。



















