保存的橈骨頭骨折で早期可動域訓練は4週間固定より有利か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:保存的橈骨頭骨折で早期可動域訓練は4週間固定より有利か?
  • 英語タイトル:Early controlled mobilisation improves functional outcomes in nonoperatively treated radial head fractures: A multicenter retrospective cohort study.

ここでは、ひじの骨折のあとに「早めに動かすリハビリ」と「4週間しっかり固定してから動かし始める方法」のどちらがよさそうかをまとめた研究を紹介します。
リハビリ(リハビリテーション:けがや病気のあとに、体の機能を取り戻すための訓練)や整形外科(骨・関節・筋肉などを診る診療科)で、日常的によく出てくる話題です。できるだけ専門用語を説明しながらお話しします。

目次

研究の背景・目的

「橈骨頭(とうこつとう)骨折」は、ひじの関節の外側にある前腕の骨(橈骨:とうこつ)の先端部分が折れるけがです。
この骨折は、Mason(メイソン)分類という方法で重症度をI型、II型、III型などに分けます。Mason I型と、II型の中でも軽いものは、手術をしない「保存治療(ほぞんちりょう:ギプスや装具、リハビリなどで治す方法)」になることが多いです。
ただし、このような比較的軽い橈骨頭骨折で、「早い時期から動かすリハビリ(早期可動域訓練)」を始めるのがよいのか、それとも「4週間ギプスでしっかり固定してから動かし始める」のがよいのかについては、これまで意見が分かれていました。
そこで、この研究では、複数の医療機関のデータを集めて、どちらの方法のほうが、ひじの機能や痛みなどの結果(アウトカム)に違いがあるかを調べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

この研究は「後ろ向き多施設コホート研究」といって、すでに行われた診療の記録を、あとから複数の病院でまとめて振り返る方法で行われました。
対象は、2015年から2024年の間に、手術をしない保存治療を受けた成人のMason I型と、一部のMason II型の橈骨頭骨折の患者さん174例です。
患者さんは、次の2つのグループに分かれていました。
1つ目は「早期可動域群」で、比較的早い段階から、医師の管理のもとでひじを動かす訓練を始めたグループです。
2つ目は「4週間ロングアームギプス固定後リハ開始群」で、肩から手首までを覆う長いギプス(ロングアームギプス)で4週間固定したあとに、リハビリを始めたグループです。
この2つのグループで、「MEPS(Mayo Elbow Performance Score:メイヨー肘機能スコア)」というひじの機能を点数化した評価や、ほかの評価項目を比べました。

研究の結果

結果として、早期可動域群のほうが、いくつかの指標で一貫して少しだけ良い傾向がみられました。
具体的には、ひじの機能をみる「MEPS(Mayo Elbow Performance Score、メイヨー肘機能スコア)」や、「Oxford Elbow Score(OES、オックスフォード肘スコア:患者さん自身の感じ方も含めて肘の状態を評価する質問票)」、ひじを曲げる角度(肘屈曲角度)、痛みを0〜10などの数字で表す「疼痛VAS(Visual Analogue Scale、視覚的アナログ尺度)」、仕事に戻るまでの期間などです。
ただし、その差はいずれも「最小臨床的重要差」と呼ばれる、患者さんにとってはっきりと違いを実感しやすいとされる基準の範囲を超えるほど大きなものではありませんでした。つまり、数字としては早期に動かしたほうが少し良いものの、その差はごく小さい範囲にとどまっていました。

結論:今回の研究でわかったこと

この研究から、Mason I型から一部のMason II型までの比較的軽い橈骨頭骨折では、「早期コントロール下可動域訓練(医師の管理のもとで、早い時期から範囲を決めてひじを動かすリハビリ)」は、安全に行える方法と考えられました。
また、ひじの機能スコア、動かせる範囲(可動域)、仕事に戻る時期などの面で、4週間固定する方法よりもわずかに有利な結果がみられました。
一方で、その差は「最小臨床的重要差」を超えるほど大きくはなく、決定的にどちらが優れているとまでは言えない範囲の差にとどまっていました。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察では、Mason I型から軽いMason II型までの橈骨頭骨折では、基本的には早期コントロール下可動域訓練を行う方針が、ひとつの妥当な選び方と考えられます。
ただし、患者さんがどのくらい早く仕事に復帰したいかといった希望や、医師の指示どおりにリハビリを続けられるかどうか(コンプライアンス)なども大切な要素です。
そのため、場合によっては4週間しっかり固定する方法も選択肢に含めて、患者さんと相談しながら柔軟に治療方針を決めていくことが現実的と考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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  • 昭和区 瑞穂区 千種区 天白区

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