ACL再建後AMIリスクは術前後で異なるか?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:ACL再建後AMIリスクは術前後で異なるか?
  • 英語タイトル:Preoperative and postoperative risk factors for arthrogenic muscle inhibition in anterior cruciate ligament reconstruction: A retrospective study.

ここで取り上げるのは、膝の前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament、膝の中で太ももの骨とすねの骨をつないでいる靱帯)の手術後のリハビリで、よく問題になるテーマです。
専門的な内容ですが、できるだけ日常の診察でお話しするような、わかりやすい言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

ACL再建手術(前十字靱帯を再建する手術)のあとに起こる「関節原性筋抑制(Arthrogenic Muscle Inhibition、関節の状態が原因で筋肉にうまく力が入りにくくなる現象)」という状態があります。
この関節原性筋抑制があると、再び靱帯を傷めてしまう「再断裂」や、スポーツや仕事への復帰が遅れることとの関係が疑われています。
ただ、「どんなタイプの患者さんが関節原性筋抑制になりやすいのか」「手術の前と後で、そのなりやすさが変わるのか」については、これまで十分には調べられていませんでした。
そこで、この研究では、ACL再建手術の前後で、関節原性筋抑制のリスクがどう変わるのかを詳しく調べることを目的としました。

調査の方法(対象など)

この研究では、前十字靱帯(Anterior Cruciate Ligament、膝の前方でねじれやぐらつきを防ぐ靱帯)の再建手術を受けた169例を対象に、過去の診療記録をさかのぼって調べる「後ろ向き解析」という方法で検討しました。
手術の前と、手術後45日(約1か月半)・90日(約3か月)の時点で、関節原性筋抑制(関節の状態が原因で太ももの筋肉などに力が入りにくい状態)があるかどうかを評価しました。
あわせて、年齢・性別、膝の曲げ伸ばしの範囲(可動域)、けがをしてから病院を受診するまでの期間、膝に水がたまっているかどうか(関節水腫)、半月板損傷(Meniscus injury、膝のクッションの軟骨の傷)、軟骨損傷(Cartilage injury、関節の表面を覆う軟骨の傷)などの情報を集めました。
そして「多変量ロジスティック回帰」という統計手法を使い、他の条件の影響を調整したうえで、どの要素が独立して関節原性筋抑制のリスクを高めているかを分析しました。

研究の結果

関節原性筋抑制は、全体の約3割の方にみられ、手術前から手術後90日(約3か月)まで続いているケースがありました。
手術前に関節原性筋抑制がある方は、「膝を曲げる動きの可動域が狭くなっていること」と、「けがをしてから受診するまでの期間が短いこと」と関連していました。
また、膝に水がたまっている状態(関節水腫)と、「バケツ柄半月板断裂(Bucket-handle meniscal tear、半月板の一部が持ち上がって取っ手のような形になるタイプの断裂)」が、手術前の段階での独立したリスク因子とされました。
一方、手術後の関節原性筋抑制については、「女性であること」「外側大腿脛骨関節(膝の外側の太ももの骨とすねの骨の関節部分)の軟骨病変があること」「手術前から関節原性筋抑制があること」がリスクとして挙げられました。
なお、関節原性筋抑制の有無は、患者さんが感じる痛みの強さとは、はっきりした関連はみられませんでした。

結論:今回の研究でわかったこと

ACL再建手術のあと、関節原性筋抑制はおよそ3割の方でみられ、術後3か月の時点でも続いている場合があると報告されています。
手術前の段階では、膝に水がたまっていること(関節水腫)と、特定のタイプの半月板損傷(バケツ柄半月板断裂)が、関節原性筋抑制の重要なリスク因子とされました。
手術後については、女性であること、膝の外側の関節部分の軟骨損傷(外側大腿脛骨関節軟骨病変)、そして手術前からすでに関節原性筋抑制があることが、関節原性筋抑制のリスクとして重要と考えられました。

実際の診察ではどう考えるか

実際の診察やリハビリの場面では、ACL再建手術の前から、膝に水がたまっていないか(関節水腫)、特定の半月板損傷がないか、膝の曲げ伸ばしの制限(可動域制限)がどの程度あるかを、丁寧に確認することが大切と考えられます。
手術前のリハビリ(プリハビリテーション、手術前から行うリハビリ)で、膝の腫れや水たまりをできるだけ抑え、膝の可動域を改善しておくことが、関節原性筋抑制の予防や、手術後の大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)の働きを保つうえで重要であると示されています。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット

Yoリハビリ整形外科かわな

名古屋市昭和区|八事西エリアのリハビリ整形外科

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