慢性腰痛に腰部サポーターは本当に必要か?

この記事の要点

  • 日本語タイトル:慢性腰痛に腰部サポーターは本当に必要か?
  • 英語タイトル:Assistive technologies (lumbar supports and other devices) for treating chronic low back pain.

ここで取り上げるのは、リハビリテーション(機能回復を目指す治療)や整形外科の外来で、よく話題になるテーマです。
専門的な医学用語も出てきますが、できるだけかみくだいて、日常の診察室でお話しするような言葉で説明していきます。

目次

研究の背景・目的

慢性腰痛(3か月以上、痛みが続いている腰痛)の方に、腰を支える「腰部サポーター(コルセットなど、腰のまわりを固定・補助する装具)」がよく使われています。
ただし、「痛みがどれくらい良くなるのか」「日常生活の動きがどれくらい楽になるのか」といった点を、しっかりした質の高い研究で確かめた証拠(エビデンス)は、まだ多くはないとされています。

調査の方法(対象など)

この研究は「コクランレビュー(Cochrane Review:世界的に信頼性が高いとされる医学論文のまとめ)」という形で行われました。
無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT/治療法を無作為に割り付けて比べる研究)8件、合計501人分のデータが集められました。
対象は、1年以上続く慢性腰痛の成人で、外来でリハビリテーションを受けている方たちです。
この人たちを、「腰部サポーターを使うグループ」と、「何もしない(無介入)グループ」や「非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:NSAIDs/ロキソニンなど、炎症や痛みを抑える飲み薬)などの通常の治療だけを行うグループ」とで比べました。

研究の結果

腰部サポーター単独と無介入を比べると、3か月後の痛みの群間平均差は、0〜100点の尺度で−8.00点(95%信頼区間−15.02〜−0.98、1試験・107人)でした。根拠の確実性は低いと評価されています。
このレビューでは臨床的に意味のある変化の目安を15点とし、平均差−8点はその目安に届かないと解釈しています。
NSAIDsに腰部サポーターを追加した群とNSAIDsのみの群を比べると、3〜4週間後の痛みの群間平均差は−17.66点/100(95%信頼区間−24.22〜−11.09、2試験・149人)でした。著者らは小さな痛みの軽減の可能性があるとしていますが、根拠の確実性は低く、日常生活の障害への効果は非常に不確実です。

結論:今回の研究でわかったこと

腰部サポーターをNSAIDsと一緒に使うと、短い期間(3〜4週間)の痛みを、少しだけ減らす可能性があるとされています。
一方で、腰部サポーターを単独で使った場合には、痛みや日常生活での障害(動きにくさなど)に、ほとんど変化がみられないという結果でした。
対象研究はいずれも有害事象を報告しておらず、安全性は不明です。
そのため、「慢性腰痛の方が、日常的に腰部サポーターを使うことを強くすすめられるだけの根拠は、現時点ではあまり多くない」とまとめられています。

実際の診察ではどう考えるか

NSAIDsを飲んでいる方に、腰部サポーターを追加すると、短い期間の痛みが少し軽くなる可能性はあります。
ただ、腰部サポーターだけでどれくらい効果があるのか、また安全かどうかについては、まだはっきりしていません。
そのため、慢性腰痛の治療では、腰部サポーターはあくまで「補助的な道具」として、様子を見ながら慎重に使う、という位置づけが妥当と考えられます。


参考文献


※この記事は、医学論文の内容を一般向けに解説したものです。診断や治療の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。

この記事の執筆者プロフィール


Yoリハビリ整形外科かわな
院長 佐藤洋一

Yoichi Sato M.D.

医師・AIエンジニア


専門医・認定医・資格

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定 専門医

  • 日本骨粗鬆症学会 認定医
  • 日本整形外科学会 認定リウマチ医
  • 身体障害者手帳指定医(肢体不自由)
  • 難病指定医(協力難病指定医)
  • 義肢装具等適合判定医

所属学会

  • 日本整形外科学会
  • 日本リハビリテーション医学会
  • 日本義肢装具学会
  • 日本骨粗鬆症学会
  • 日本整形外傷学会

修了

  • 日本骨折治療学会研修会 Basic, Advance
  • AO Trauma Course Basic, Advance, Pelvic & Acetabular
  • 義肢装具等判定医師研修会
  • 生活期のリハビリ医療に関わる医師の研修会
  • ボトックス講習・実技セミナー(上肢痙縮・下肢痙縮)

受賞歴

  • 日本リハビリテーション医学会 Reviewer Award
  • 日本骨粗鬆症学会 研究奨励賞
  • 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞
  • 日本骨折治療学会 優秀論文賞
  • 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞
  • 日本腰痛学会 優秀論文賞
  • 東海骨・関節疾患研究会 ベストレポート賞(2度)

趣味

  • キックボクシング(アマ2戦2勝1TKO)
  • コーディング(Python, Java, html, CSS)
  • 水泳、テニス、ヨット
  • アウトドア、旅行

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